Strawberry
□こけしの前髪
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「………っ…」
「うん、かわいいよ、***」
「……あ、あああ、ありがとっ」
動揺しすぎ
はははと小さく笑ってボソッとつぶやいたユノ。
それはもう、爽やかで爽やかで爽やかな笑顔で。
こんなにも爽やかに女性に『かわいい』と言える人は、そんなにいないだろう。
まぶしすぎて、私はまともに目も向けられない。
恥ずかしがる様子もなく、目を細くさせて笑う彼は、実は誰よりもずっと大人で寛大な男性なのかもしれない。
「こ、今度からは気をつけてください…」
「はは!敬語?」
「……もうユノやだぁ」
ははっ!ちょっと待ってよ
やっぱり爽やかな笑顔で、洗面所に駆け込む私を追いかけるユノ。
「大丈夫。***は***だよ。どんな***もかわいい」
洗面台に手をついてうつむく私の首を後ろから抱きしめて囁いたユノ。
「本当…ですか…?」
「本当本当。強気で怒ってる***も好きだし、弱気で敬語になる***も好き」
「ちょ、ユノ!」
「ははは!ごめんごめん」
ちらっと顔を上げて洗面台の鏡を見ると、ユノと目が合った。
ユノはにこっと笑うと、私の首に顔をうめた。
ユノの春っぽい茶髪が頬に当たってくすぐったい。
「……うれしいよ、ユノ」
………また、地道に前髪伸ばしますか。
今度は失敗しないでよね、ユノ。
(そもそも、何で失敗したの?)
(考え事してた)
(……考え事って?)
(***の唇、ふにふにして柔らかそ、)
(馬鹿)
キスなんていくらでもしていいのに
-END-