Strawberry
□こけしの前髪
3ページ/4ページ
なかなか来ないユノに、少しだけ怒りが沸いてくる。
私はわざと足音をたてながらユノの元へ向かった。
当のユノと言えば、さっきと今だに変わらない場所で、ハサミを持って座っている。
「ユノ!ちょっと!」
「なぁんだよー」
「なんだよー、じゃないよ!見て!私の前髪!」
「……うん?見たけど?」
「じゃなくてーっ!」
目をまん丸にして下唇を前に出すユノ。
ユノ君はこの劇的な前髪を見て、何も思わないのかな?
人をこんな姿にして、少なくともあなたの彼女なのに私。
どうすればいい?
自分の彼女の前髪がこけし人形って見てられる?
信じられない。
怒っているのか、悲しんでいるのか。
自分ですらもわからないグチャグチャな感情のせいで、いとも簡単に涙腺が緩み始める。
「なんで怒ってるのか分からないけど……」
小さくつぶやくユノを、恨み目で見てみれば。
彼は困ったような、照れたような、そんな口調で私に言うんだ。
「……***、かわいいよ、それはそれで」
私っていう奴は本当に簡単な女で。
あなたの言葉ひとつで私はどん底から救われるんだ。
なーはーはー!
大口あけて豪快に笑う君。
_