Strawberry

□Bad tooth
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「……痛い」


「……んっ?」


「いたーい!」


「なになになに〜!なんだよ〜!」





なぜか手に持っていた料理本



それから珍しくつけていた眼鏡



急いでその2つをテーブルの上に置いて、ユノは私のもとへ小走りでやって来た。



そして私の前にしゃがむユノ君。





「なにぃ。どうしたの?」


「痛い」


「なんで?」


「痛い」


「どこが?」


「歯」


「は?」


「歯!」


「……あぁ、歯か」





ユノは一発豪快に笑って、床にお尻をつけて座った。





「どのくらい痛い?」


「100くらい」


「……なるほど〜」





少し笑ってからコクコクと何度もうなずくユノ。



いつ見たってほのぼのしてしまうほど、顔が小さな彼。



ほのかに香るのは、爽やかで海のような香水の匂い。





「100ってことは、そうとう痛いんだな」


「うん。そうっとうね」





またユノはナハナハと豪快に笑った。



彼はテーブルの上に置いてある眼鏡を取りに行き、再び耳にかけて私の口の中をのぞき込む。





「……見えん」


「なにが?」


「虫歯」


「当たり前」





そんなマヌケなことをしても、変顔1こで済んでしまうんだから。



この人は本当に、魅力のカタマリだ。





「***は昔っから虫歯に弱いよな〜」


「……なにそれ」





……昔っから、ねぇ






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