大ヒロ 2
□DARKSIDE OF LOVE
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仕事帰りのタクシーの中。
ウトウトしかけた僕の耳に飛び込んできた聞き慣れた声。
そっか火曜の夜はレギュラーだっけ。
まだ聞いたことがなかったヒロのラジオ。
そのまま耳を傾けているとゲストにギタリストのあいつが出てきた。
最近ずっと一緒にいるらしいあの男だ。
なんとなく気にくわない。
僕は行き先の変更をタクシーの運転手に告げた。
仕事を終えて帰宅したヒロは部屋で待っていた僕に驚く。
「大ちゃん。どうしたの?」
「急にヒロに会いたくなって。迷惑だった?」
「そんなことないよ。ビックリしたけど」
素直に笑うヒロは可愛いけど。
ごめんね今日は優しくできそうもない。
「ん…っ。大ちゃん…」
口唇を離すとヒロは潤んだ瞳で僕を見て、指を絡めるように手を握ってきた。
欲しい、の合図。
このまま抱いてしまえば僕も君も楽なのにね。
「ラジオ、聞いてたんだ」
「え…?」
流されそうになってたヒロは予想外の僕の言葉に戸惑う。
「文化放送。あの男が来てたでしょ」
「…トモのこと?」
僕の言いたいことがわかったのかヒロは少し眉をひそめる。
「この前も言ったよ。トモは大事なパートナー。それ以上のことは何もない」
ヒロにしては珍しく怒ったような口調。
この前も、この話でケンカみたいになったから。
「大ちゃんの考えてることわかんないよ。大ちゃんだって色んな人と仕事してるでしょ。オレはその人達のことそんな風に気になったりしないよ」
ヒロの言ってることは正論だ。
こんなことで何度もぶつかるなんておかしいと思う。
でも、僕はヒロのことならおかしくたっていいんだ。
「大ちゃん…!やだよっ」
言い合いの途中で、再び行為を続けようとするとヒロは抵抗してきた。
「何考えてんだよ…やだ!!」
押さえ込んで、何の準備もなしに体を進める。
「――っ!」
突然のことにヒロは受け入れきれず僕を押し戻そうとしてきた。
「大ちゃん痛い…やめて…っ」
ヒロが抵抗する度にわざと強く腰を押しつける。
ヒロの涙が、僕を呼ぶ声が、余計に僕を煽る。
もっと痛みを感じて。
僕のこと、しっかり体に憶え込ませて。
「――…っ」
抗う言葉を言わせたくなくて口を塞ぐ。
「ダメだよ。無理に声出したら喉が潰れるよ」
それでもヒロは声を上げようとして、瞳に涙を溜めて首を振る。
このまま体を任せてしまえば楽になれるのに。
「ヒロ…好きだよ。愛してる」
甘い言葉をかけながらも動きは止めてあげない。
「大、ちゃん…っ」
押さえていた口を解放すると、ヒロは苦しそうに僕を呼んだ。
意識を飛ばしそうになるヒロを無理矢理覚醒させる。
「ヒロ…ちゃんと僕を見て」
僕のことだけ考えて。
「大ちゃ…もぅ…っ」
ヒロが意識を手放す直前に、顔を自分に向けさせてしっかり目を合わせた。
「ごめんね…」
涙で濡れた頬に優しく触れて体を離す。
ヒロを苦しめればそれだけ、僕も苦しい。
ヒロの痛みと同じくらいに胸が痛む。
それでもこんなことをしないといられない。
同じように痛みを分け合いたい。
いつだって苦しいくらいに、君を愛しているから。