大ヒロ 2

□I need you.
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「大ちゃん大ちゃん、まだ誰も歩いてない雪のとこあるよ」

弾むようなヒロの声が僕を起こす。

ただでさえ慣れないスキーで体が痛いのに、わざわざ起きて寒いとこになんて行きたくないのに。

「行ってみようよ。すっごいキレイだよ」

そう言ってヒロが笑うから。
僕はのそのそとベッドから起き上がる。



僕が苦手なスキーに来たのもヒロがきっと楽しいよって笑うから。

いつもいつもわかってて、僕はその笑顔に騙される。



「ね、キレイでしょ」

君の誇らしげな笑顔はやっぱり可愛くて。
僕は騙される自分に少しだけ感謝する。

「雪合戦する?」
「冗談でしょ。凍えちゃうよ」
「じゃあ雪だるま」
「やめなよ。冷たいよ?」

手袋もしないで雪をすくい取って、赤くなったヒロの指先をポケットの中にある僕の手で温めてあげるのに理由を探してみる。



恋人でいない方が都合はいいけど。
何年も。
何のために君を想っているんだろう。



「冷たぁ〜」

ヒロは自分で指先に息を吹きかける。

「ほら。風邪ひいちゃうよ」

できるだけ自然を装って。
ドキドキを隠しながらヒロの手を握る。



誰にも教わらないのに。
誰かを好きになるこの気持ちを、どうして誰もが持っているのだろう。



前に一度だけ、ヒロに気持ちを伝えたことがある。

どうしても抑えられなくて。
でも真面目に言えるだけの勇気もなくて。

少し冗談ぽく、ヒロの声が好きだと言ったときのように。

「僕のものになっちゃえばいいのに」

試すみたいにそう言った。

ヒロはやっぱり冗談としてしか受け取らなくて。

「それもいいかな」

って笑うから。
僕の胸はねじ曲がるだけ。



いつかは溶けて消えるこの雪も。
白い世界も。

儚いからこそ美しいなら。

僕の気持ちもいつか消えてなくなってしまえばいい。

そんなことを考えながら、ただ僕はヒロの手を温める。



end.
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