お兄ちゃん

□夏芽の涙
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あれは……キス……だよね?


どうしてだろう?


どうしてお兄ちゃんが私にキスをする理由があったんだろう。


確かに駄々をこねてはいたけど「黙れ」って言うだけで済むことなのに。


無意識のうちに唇に指を当てて、そこが濡れていることに気付いて急に恥ずかしくなった。




唇を舐められたときの感触も甦って、耳まで熱くなる。



……お兄ちゃんと、キス、したんだ。



ちょっと強引で、でも甘くて優しいキス。




お兄ちゃんの性格そのままって思って、その思考が恥ずかしくて俯いた。



「もうすぐ保健医戻ってくるから帰り支度しとけ」



何事もなかったかのようにかけられたお兄ちゃんの声に、ますます混乱する。


お兄ちゃんにとってキスは何でもないことなの?


私にとってはきっと、一生忘れられない、初めての、キス。




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