お兄ちゃん
□佐伯夏芽
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「……。お兄ちゃーん! 朝! 早く起きないとごはんいらないみたいってお母さんに言っちゃうよ!」
タオルケットを引き剥がそうと手を伸ばした瞬間、お兄ちゃんが薄目を開けた。
「……朝メシ抜きは反則だろ……」
目が合ったことに頓着せず、横たわったままサラリと前髪をかき上げて、お兄ちゃんがその手を伸ばす。
「……起こして」
「……ば……かじゃないの!? 自分で起きなさいよ!」
動揺して裏返った声を誤魔化すためにきつくなった口調を既に後悔しながらも、ベッドから一歩退いて怒鳴る。
「はいはい。……どうだろな、お兄様に対してその態度」
腹筋で起き上がったお兄ちゃんがベッドを降り、Tシャツを脱ぐ。
「や……! 私が部屋出るまで待ってよ!」
踵を返した私の耳に聞こえたのは、お兄ちゃんの含み笑い。
「高1にもなってウサギ柄のパジャマって」
「うるさいな! ホントにごはんいらないって言ってたって言うよ!」