お兄ちゃん

□お兄ちゃんの手
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食欲もないし、お兄ちゃんと顔を合わせているのもつらくて結局リヴィングに下りないまま、何故かメールの来ない携帯を握ってベッドに横になった。

紘子、あのあとどうしたかな。

お兄ちゃんの為にお弁当作ったって張り切ってたの、知ってたのに。


わざとじゃないけど、紘子が楽しみにしてたであろうお昼休み、ぶち壊しちゃったことに胸が痛んだ。


それと同時に、お兄ちゃんが紘子とお昼を食べることを了解したんだってことが、目の前を暗くした。



解ってたこと。いつか訪れるはずだったこと。私が気付かなかっただけで、もう何度も繰り返されたかもしれないこと。



お兄ちゃんが誰かの「カレシ」になる、ってことは。



何度も言い聞かせるのに、聞き分けの無いこの胸は、いつまでもズキズキと痛み続ける。



どうして好きな人の幸せを願えないの。お兄ちゃんのことも紘子のことも、大好きなはずでしょう?



いつの間にか溢れた涙が、耳に流れ込んでくすぐったかった。





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