お兄ちゃん

□佐伯冬磨
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「急にこんなこと言われても困るの解ってます、先輩受験生だし。でも、邪魔しないですから。好きなんです」



肩のあたりでカールされた髪を揺らしながら、夏芽の友達だという城山紘子が俺の目の前で両手を握り締めている。


夏芽に「一緒に帰りたいと言っている友達がいる」と言われた翌日の放課後だ。


面倒なことになった時の保険に連れてきた佐藤が夏芽と消えたのが気になって、正直この子のことなんてどうでもよかったが、夏芽の友達なら無下に断ることもできないだろうと、一応「お話」を聞いているのだが。



「邪魔だとは思わないけど、受験生の身じゃろくに構ってあげられないだろうから」



まずは第一段階、やんわりと断ってみた。



「構ってくれなくても文句言わないです。ただ、もっと先輩のこと知りたいし……お付き合いっていってもワガママ言わないですから。そばにいたいんです」



既にそれがワガママなのだと思ったが、そこを突くわけにもいかない。


第二段階、これが効かなかったら相当のKYとして、最終段階にいくしかない。



「色々考えてくれてありがとう。でもごめん。俺、勉強に集中したいってだけじゃなくて……」



核心は言わずにおいたが、少し考えれば察するのは容易いだろう。


さぁ、どう返してくる?
 


「……そう、ですか。……解りました。そうですよね、先輩モテるだろうし……困らせてごめんなさい……」



さすがに食い下がってはこないか。面倒が省けてよかった。



「ごめんね」



特に悪いとも思っちゃいないが一応謝ってみる。


謝らないほうがいいケースもあるが、この場合は違うだろう。




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