お兄ちゃん

□佐藤雄基
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昼休みも終わりに差し掛かったころ、放送で呼ばれて職員室に行った化学の教科委員が戻ってきた。


慌てた感じで黒板に書きだした内容に目をやって、科学雑誌読んでる佐伯を振り返る。



「佐伯ー、今日はバケガク、第1実験室だってよ」



雑誌からチラッと目を上げた佐伯は「聞いてなくね?」と応えた。



「まあ、聞いちゃおりませんが。っていうか何させる気よ、ヒラリン」



そりゃ、教科書やら白衣やらは持ってるが、実験室で普通の講義ってこともないだろう。


なんて俺がぼけぼけしてる間に佐伯は教室移動の準備を始めた。


面倒くさそうに白衣を羽織る仕草、必要最低限の筆記具だけを白衣のポケットにセットして、教科書と資料集、参考書、ノートを左腕に掴んで、こっちを見る視線。


まあ、モテるわな、こりゃ、って見本みたいなヤツ。




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