終わり
□◎第63話・温もりが消える時◎
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揺ぐ 視界に
貴方との 世界が
終わって いく
◎温もりが消える時◎
「福島空港まで、お願いします」
病院を抜け出して、僕と大根はタクシーに乗った。
するとすぐに彼女の体には、異変がおきた。
「………っ」
呼吸が、荒い。
「大丈夫?苦しいの…?」
すると大根は、笑顔で答えた。
「少し…慣れれば大丈夫だから……ケホッケホッ…」
僕に心配かけないように、無理して笑う大根。
こんなに病状が重いなんて…。
呼吸をするだけで咳が出て、かなり辛そうだ。
タクシーの後部座席に、2人寄り添いながら降り続く雨を窓ごしに眺めていた。
「結構、雨降るなぁ…」
「雪じゃなくてよかった…。雪だったら飛行機止まっちゃうかも」
「あはは。福島はそんな雪降らないよ……」
そんな、たわいもない会話さえ、今の僕等には貴重だった。
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