終わり

□◎第63話・温もりが消える時◎
1ページ/4ページ



揺ぐ 視界に

貴方との 世界が

終わって いく


◎温もりが消える時◎


「福島空港まで、お願いします」

病院を抜け出して、僕と大根はタクシーに乗った。

するとすぐに彼女の体には、異変がおきた。

「………っ」

呼吸が、荒い。

「大丈夫?苦しいの…?」

すると大根は、笑顔で答えた。

「少し…慣れれば大丈夫だから……ケホッケホッ…」

僕に心配かけないように、無理して笑う大根。

こんなに病状が重いなんて…。

呼吸をするだけで咳が出て、かなり辛そうだ。

タクシーの後部座席に、2人寄り添いながら降り続く雨を窓ごしに眺めていた。

「結構、雨降るなぁ…」

「雪じゃなくてよかった…。雪だったら飛行機止まっちゃうかも」

「あはは。福島はそんな雪降らないよ……」

そんな、たわいもない会話さえ、今の僕等には貴重だった。


_
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ