11/25の日記

23:56
パンパスグラス(光輝)
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 決して手放さなかった物がある。
 この街に来る前から、ずっと求めていた。
 心から、なんて表現では物足りない。
 体が求めているのでもない。
 魂が、求めているのだ。
 それは、どんな宝石よりも光り輝き、どんな神よりも貴く、どんな酒より甘美。
 だが、頭の芯まで蕩ける達成感に酔い痴れるのは、手に入れて賛辞の言葉を受ける、その一瞬だけ。
 すぐにまた、欲しくなる。
 まるで、底の抜けた杓子で、水をすくうように、魂から飛び立ってしまう。
 延々と求め続けるが、彼は野鳥ではない。
 歌声を見込まれて囚われた、カナリアの如く。
 最初はカナリアだったかも知れない。
 でも今は、伝書鳩だ。
 脚に書簡を括られて、何時間も空を飛び、少し休んで、また書簡を運ぶ。
 それでもカナリアよりは幸せだと思う。
 青い空は魅力的だし、やはり鳥は飛ぶ者だから。
 滑稽ではあるけれど。
 宛もなく飛び続けるよりは良い。飼い殺されるよりは良い。
 自由でない限り、魂が満足することはなくても、空を飛び続けることはできる。
 だから、今日も名誉を求め、己を高めるのだ。


 >拍手レス
 化学なら、理詰めなので分かりやすいんですがねぇ。
 本当に謎です。


 因みに、伝書鳩が仕事中、鷹や鷲に食べられてしまわないかと気になって、調べてみました。
 伝書鳩を撃墜させるため、鷹匠を総動員したこともあったらしいです。
 大事な書簡で殺られたらヤだなぁ。

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