11/15の日記
23:31
からたちばな(鋭敏な)
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王宮の門を潜ってすぐ。
巡回する騎士たちの視線を擦り抜け、柱の影に隠れる。
乱れた呼吸を整え、心を落ち着かせる。
少しでも音を立てれば、たちまち正体を暴かれてしまうだろう。
早くしなければと思うほど、鼓動が狂う。
目を閉じて、ゆっくりとした呼吸を心掛ける。
「吸って……。吐いて……。吸って……。吐いて……」
落ち着いた声に誘導されながら、呼吸する。不思議と心が落ち着いてくるようだ。
ところが。
「吸って……。吸って……。吸って……。吸って……。」
「っぷぁ!? はっ、はっ、はっ、はっ……」
突然の指示に釣られ、思わず空気を吸い続け、ギブアップ。
後ろを振り返ると、決して他の人には見せない、悪戯っぽい笑みを浮かべる彼。
爪先から頭のてっぺんまで、急激に熱くなる。
たまらず彼女は逃げ出してしまった。
こうして今日もまた、王宮はエリーという侵入者から守られた。
うちの隊長はお茶目。
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