ONE PIECE

□自分自身に嘘はつけないと知りながら
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こんな感情はいだいても無駄なものだと、頭ではしっかり理解していた。

















「どうしたもんか、」











いだいても無駄。


というより、こんな感情を持ってしまったこと自体がまずいわけで。


いだいてはいけない感情。
俺の中にひしめいているのはそればかり。






















「何難しい顔してるの?レイリー」


「………いや、」


「まさか他の女のこと考えてる?妬けちゃうわ」














船が久しぶりにたどり着いた島は、ひどく閑静な街で。
昨日、島が見えたとはしゃいで大宴会になったのはもう、いつもの恒例行事のようだが。


今回は、皆に付き合わずひとり街に出た。


あんなのを見て平然としていられるほど、俺に余裕はなかったわけだ。
しっかりと、理解しているはずなのに。








ふと、先ほど誘ってきた街の女が腕を絡めて、言葉を投げ掛けてくる。
綺麗な女だと思う、ただ、俺にとってそんなことはどうでもいいことだけれど。












(ほかの女、か、)








言い訳は、できない。


子供のように扱うのももう限界なのだ。
名無しさんという存在はちゃっかり俺の中で何にも換えられない大切な女になっていて。

















理解、している。
名無しさんがロジャーの大切なひとであること。


ロジャーが愛する、たったひとりの女だと。


痛いほど、見てきているはずなのにいつだって俺は往生際が悪い。















「ねぇ、」








静かにグラスを傾ければ、隣りで誘うように動く唇。


名無しさんもこんな風に誘ったりするのだろうか。
なんて、くだらないことまで考える始末。














ふと、思い出すのは昨日の光景。
ロジャーの腕の中でしあわせそうに笑う彼女を、一体どれほど見てきたというのだろうか。


諦めたと思いきかせたはずなのに、俺は。


























「ねぇそろそろいいでしょう、?」












まとわりつく、女の影。


そしてまた、同じことの繰り返しだ。
満たされないまま。





















自分自身に嘘はつけないと知りながら
(きみのような綺麗な長い髪だったから、)
(それが、誘ってきた女を受け入れた理由、)

























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