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□拓蘭
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それはひどく雨が降る日だった
静かだった病院内に騒がしい声が響きだす


看護師が大急ぎで患者を運ぶ
運ばれているのは、ピンクのきれいな髪の男の子


患者の名前は霧野蘭丸
彼は、1時間前倒れた

原因はガン

すでに5回ほど倒れ、病院に搬送されている
きっと、彼に残された時間はもう少ない

彼は3年前まで元気にサッカーをする中学生だった

中学校2年生が終る頃の冬の日に彼の運命は大きく変わった


重いガンだとわかり、彼は元気に動くことが許されなくいなった

もちろん、サッカーもできなくなった

個室の302号室に運ばれる
呼吸器を取り付けられる

2時間経ち、彼は意識を取り戻した

そんな彼に、担当医が話を始めた



「霧野くん…
君はもう、残された時間が少ない。
サッカーをすることはもちろん、外に出ることですら許されないんだ」


それはやはり彼には辛い言葉だった
彼はまだサッカーが好きで、
できないとわかっていながらまだサポートとしてサッカー部で活動していた

「ねえ、先生。俺、まだやりたいこと残ってる。たくさん…」

「それぐらい、俺もわかってる」

担当医は彼をよく理解していた
彼のサッカーへの気持ち、学校の人間関係
中学校の頃の彼
彼の、考えていること…


「だったらさ、俺このまま…」

「手術を受けないつもりか」

「はい。」

素直に答える彼
彼は頑なに手術を拒否し続けていた


「それでは、本当に時間は…少ないんだよ」

「わかってます」

「だったら…」

「でも、成功するかわからない手術にかけるより、
俺は神童の傍にいて、あいつを最期まで支えたい。
俺の、最期まで…」


だから、と言う彼
担当医は納得はいかない顔をする

「俺の腕が信じられないのかい」

「そんなことありません!ただ…」

「君の気持ちはよく知っている。
わかった。手術はしない。でも、俺の言うことはよく聞いてもらうよ」

「…ありがとうございます!」


そうして彼は手術を拒否し、入院を1週間した末、退院していった
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