長編 -復活-


□貴方は私が守ります
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____数週間後



 「おはようごさいます、風さん。」

 
 「おはようございます、綾乃さん。今から学校ですか?」


 「はい。じゃ、行ってきます。」


 「行ってらっしゃい。」


 
 あれから私は日本に住むことに決めて、もう手続きはしてきた。急なことで上に報告したら、反論が来たが押し切ってしまった。
何故日本に居座るのか理由を聞かれたときは本当に焦った。・・・まさか一人の女性に一目惚れして、未練タラタラのまま帰国するのが出来なくて居座るだなんて口が裂けても言えないことだ。



そんなこんなで何とか日本に居座ることが出来たのだが、一番重要なことを、私は抱えている。




さっき偶然綾乃さんとすれ違った際に軽く挨拶を彼女はしてくれたのだが、(今偶然すれ違ったんじゃなくて待ち伏せしてたんじゃないかと思った人、いましたら名乗り出て下さい。苦しくないように一発で終わらせてあげますから。)肝心な私の方は何故かなかなか思うように喋れないのだ。
 

今時こんな男はこの世界に何人存在するのだろうか。



本当はもっと彼女と話したい、笑いたい、なのにそんなことすら出来ないなんて。
 
 




・・・情けない






感傷的になりながら重たくなった足で並盛町を歩く。





一目惚れの相手である、綾乃さんは並盛高校に通う高校二年生だ。
リボーンと綱吉さんの情報では、彼女は人柄もよく誰とでも分け隔てなく接し、さらに美人とくれば、モテるわけで。ちょくちょく告白されているらしい。一応断ってるらしいが、綾乃さんに男が出来る日はそう遠くはないようだ。







 だが、最近少し彼女の様子が変なのだ。たまに後ろから声をかけたときにかなり驚いていた。不審に思い、何かあったのかと聞いても彼女は大丈夫の一点張りで、なかなか答えてくれない。嫌な予感しかしないのだ。


(何か、あったんでしょうか・・・。)





いくら自分一人で悩んでもこのもやもやは消えるはずなんてなくて、綾乃さんの力になってやれない自分がどうしようもなく情けなくて、






「・・・オイ、風。オマエはいつまでウジウジしてんだ。俺は他人の恋愛事情なんて興味なんざねーが、オマエ見てるとすげぇイラつくんだよ。っつーことでさっさと告れ。当たって砕けろ。」



「リボーン、まさか覗き見ですか?悪趣味ですね。・・・あと、貴方思いっきり私にフラれろと言いましたね。」



「あたりめーだ、てめえは一生独身でいろ。それと俺は覗いてねーぞ、通りかかったらたまたまお前たちが居ただけだ。」



「ほぅ、一生独身ですか・・・どうやら余程死にたいようですね。」





まさかリボーンと会って開口一番にこの話題が出てくると思わなかった。とゆうか、見られてたとは、油断していた。流石リボーンといったところだ。









にっこりと笑いながらじりじりとリボーンに迫るとリボーンが衝撃の一言を発した。






「・・・風。お前は知ってっか?最近綾乃を変な野郎が後を付いて回ってんのを。」





「は、い?」



「・・・やっぱりお前は知らなかったか。世間で言うストーカーってやつだな。最近綾乃の調子がおかしくてな。無理に笑ってんだ。お前でも気がついてただろう?」









綾乃さんに、  ストーカー?






リボーンの表情からは先程のからかいや冷やかしを含んだ顔ではなく、ヒットマンの、顔だった。それを見て、これは嘘なんかじゃないと確信する。

すると同時に自分でも驚くほどの怒気が湧いてきた。

それはストーカー行為を働かせていた男と、その被害にあっていた彼女に気付かなかった自分自身に対する大きな大きな怒り。







私 は 何 を し て い た ん だ  









「っく、なんで私はもっと早く気付いてあげられなかったんでしょうか。綾乃さんが危険な目に会ってるというのに・・・。」



「風。まだストーカー野郎は綾乃に直接的なことはしてきてねぇ。だが、あっちは素人のクセにやけに慎重だ。つまり手掛かりが少なすぎんだ。これ以上綾乃に被害に合わせない為に色々と調べるしかねーな。」


リボーンが冷静に私に犯人についての情報を話す。この冷静な声を聞き、自分はいつまでも悔やんでいてはだめだと気付く。


そして、この声で分かったことが一つ。



ここまで冷静で____冷たい、まるで相手を氷のように固めてしまうような感情を殺した声は、



「綾乃に手ぇ出すなんて度胸あるみてーだからな、俺に撃ち殺されても文句はねぇ筈だ。」




リボーンも相当怒っている、ということだ。





それから私はリボーンと手を組み犯人についての情報を徹底的に調べ上げた。だがなかなか姿を現さないので調査は一向に進まなかった。





私達が苦戦しているときに、ストーカーは徐々に彼女に接近していき__







翌日。


朝早くからリボーンに呼び出されリボーンが居候している彼女の自宅に全力疾走で着いた。




そこには今にも泣き出しそうな綾乃さんの背中をさする綱吉さんと、一つの大きめな茶封筒を持って深刻な顔をしているリボーンの姿があった。









貴方は私が守ります









(何があっても、貴方を守ります。その為にも日本に長期滞在すると決めたんですから。)

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