Devil's story.
□金と石ころ
2ページ/3ページ
一人で待つと時間が長く感じる。
暫く空を見上げていると、黒い双頭の鴉が、こちらに向かって飛んで来た。
マイモンだ。
「「いたのかベルフェゴール」」
降りて来るなり、二つの嘴が開かれる。
「まあな」
ガープにからかわれた分、その上司であるマイモンに素っ気なく返答する。
「「一日中こうしてたのか?」」
「いや、万魔殿中のトイレを掃除してからここにいた」
今日、自分がした事をマイモンに報告する。
「「仕事は?」」
「ベルゼブブに任せてきたぜ」
ピースサインを怒りかけているマイモンに見せる。
「可哀相に」
他人事のようにマイモンは呟いた。
「いいだろ」
立ち上がりベルフェゴールは暖をとるために、マイモンの艶のある黒い羽毛に手を入れる。
「「何する温度代取るぞ」」
「五月蝿いこっちはお前の羽で、暑いと思って冷やしてやってんだ。感謝しろアホ鴉」
マイモンに嘴でつつかれ、仕返しにベルフェゴールはマイモンの羽を引っ張る。
「痛い」
羽が引っ張られたのが気に食わなかったらしく、マイモンは人の姿になる。
羽が黒だったので鴉の姿の時は気付かなかったが、マイモンの服はいつもより砂や埃が沢山付いていた。
「いつもより汚れたな」
服の汚れを払いながら言ってやると、「今日は金脈が見付かった」と返って来て、普段、あまり変わらないマイモンの表情が嬉しそうになる。
「そうか良かったな」
帽子に付いた砂も払ってやる。
「買うか?」
「金は脆弱だ。すぐ変形する」
マイモンは勧めるが、ベルフェゴールは断る。幾ら輝いて美しい金でも曲がり易くては、使う意味がない。
硬く強く無ければ、レヴィアタンは斬れない。
「価値の解らない奴め」
「お互い様だ。で、銀や鉛は無いのか?」
「お前が邪魔な石ころを買うなら、いくらでも売ってやる」
金以外には、用はないそうだ。
やるではなく、売ると言うところがマイモンらしいが。
金はベルフェゴールにとっては石ころで、マイモンにとっては、より強い合金を作る為の銀や鉛を石ころ呼ばわりする。
「マイモン、自分はお前にとって金か石ころか?」
急にふと、聞いてみたくなった。
暫く黙りこんで、アホ鴉は言った。
「いい金ヅルだ」
「焼鳥にしてベルゼブブとベヘモトに食わすぞ。アホ鴉」
答えは見えていたので、そんなに落胆はしなかった。
さて、金ヅルは金ヅルらしく石ころでも買い取ろうか。
→後書き