Devil's story.

□金と石ころ
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一人で待つと時間が長く感じる。

暫く空を見上げていると、黒い双頭の鴉が、こちらに向かって飛んで来た。

マイモンだ。

「「いたのかベルフェゴール」」

降りて来るなり、二つの嘴が開かれる。

「まあな」

ガープにからかわれた分、その上司であるマイモンに素っ気なく返答する。

「「一日中こうしてたのか?」」

「いや、万魔殿中のトイレを掃除してからここにいた」

今日、自分がした事をマイモンに報告する。

「「仕事は?」」

「ベルゼブブに任せてきたぜ」

ピースサインを怒りかけているマイモンに見せる。

「可哀相に」

他人事のようにマイモンは呟いた。

「いいだろ」

立ち上がりベルフェゴールは暖をとるために、マイモンの艶のある黒い羽毛に手を入れる。

「「何する温度代取るぞ」」

「五月蝿いこっちはお前の羽で、暑いと思って冷やしてやってんだ。感謝しろアホ鴉」

マイモンに嘴でつつかれ、仕返しにベルフェゴールはマイモンの羽を引っ張る。

「痛い」

羽が引っ張られたのが気に食わなかったらしく、マイモンは人の姿になる。

羽が黒だったので鴉の姿の時は気付かなかったが、マイモンの服はいつもより砂や埃が沢山付いていた。

「いつもより汚れたな」

服の汚れを払いながら言ってやると、「今日は金脈が見付かった」と返って来て、普段、あまり変わらないマイモンの表情が嬉しそうになる。

「そうか良かったな」

帽子に付いた砂も払ってやる。

「買うか?」

「金は脆弱だ。すぐ変形する」

マイモンは勧めるが、ベルフェゴールは断る。幾ら輝いて美しい金でも曲がり易くては、使う意味がない。

硬く強く無ければ、レヴィアタンは斬れない。

「価値の解らない奴め」

「お互い様だ。で、銀や鉛は無いのか?」

「お前が邪魔な石ころを買うなら、いくらでも売ってやる」

金以外には、用はないそうだ。

やるではなく、売ると言うところがマイモンらしいが。

金はベルフェゴールにとっては石ころで、マイモンにとっては、より強い合金を作る為の銀や鉛を石ころ呼ばわりする。

「マイモン、自分はお前にとって金か石ころか?」

急にふと、聞いてみたくなった。

暫く黙りこんで、アホ鴉は言った。

「いい金ヅルだ」

「焼鳥にしてベルゼブブとベヘモトに食わすぞ。アホ鴉」

答えは見えていたので、そんなに落胆はしなかった。

さて、金ヅルは金ヅルらしく石ころでも買い取ろうか。


→後書き

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