Devil's story.
□図書館の魔王
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今日も地獄図書館は平和だ。とは言い難い。
「返却日が過ぎている次からは気をつけてくれ」
「すみません」
「謝る程じゃないただ気をつけて欲しいだけ」
返却日が遅れた悪魔は頭を下げ、また次の本を借りるべく、本棚へ歩いていった。
「アンこれよろしく」
「んわかった」
今し方返却された本が損傷していないか確かめてから、手伝いのアンドロマリウスに渡し本棚に戻して貰う。
パソコンの画面に映し出された貸出リストを見て、ダンタリアンは微笑んだ。
なかなかの貸出量だ。それ程悪魔達が本を読んでくれているという証拠だ。
せっかく良い事があったのに、ダンタリアンは嫌な気配を感じ取る。
「あぁ!!何故だっ!何故この文字の羅列を見ても私の心は詩わないっ!!」
アモンが立ち上がり、また詩の創作に行き詰まっているらしい。
だが、
ダンタリアンは溜息を吐き、カウンターを強く蹴り、跳躍しアモンの顔面を踏み台にする。
「館内では静かにな」
図書館のマナーは守って貰わねば。
ボソリと小言を言ってから、そのままグザファンが座っている円卓に着地する。
「火気の持ち込みも厳禁だ」
円卓の上で仁王立ちをしたダンタリアンは東洋の夜叉の如く髪を振り乱し、グザファンを見下ろす。
「ダンタリアン?……」
本から恐る恐る顔を上げたグザファンは怯えたような顔をしてダンタリアンを見上げる。
「安全靴の踵に隠しているライターとその腕時計型の爆弾は没収させて貰う」
「そんなの持ってないけど?」
何食わぬ顔で嘘を吐く。流石、唯一神を裏切り堕天してきた事はある。
「その程度で俺を騙せるとでも?それとも、爆弾魔のお前が爆弾を持っていないとは、爆弾に飽きたのか?」
挑戦的な目で見下し鼻で嘲笑う。
「なわけないじゃんちゃんと持ってるさ」
がざがさとダンタリアンが感じ取れ無かった分の火器まで丁寧にグザファンは出し、ダンタリアンに違反の証拠品を見せ付ける。
「お前馬鹿だろ?」
ここまで馬鹿正直に、隠し持っていた爆弾を見せられると、ダンタリアンは呆れてしまう。
「グザファン…毎度だからどうなるか分かるな」
「あっ」
状況が分かっているらしく、グザファンは顔を引き攣らせて本を閉じる。
「表にでろ」
ダンタリアンの覇気ある笑顔に気圧され、グザファンは大人しく図書館から出る。