Devil's story.

□ある日森の中……
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ある日森の中、バルバトスは聞き慣れない音を耳にした。

何か引き摺るような音。蛇ではない。もっと大きく速く動く生き物だ。

地上の森であるここで未知の生物と出会うのかと、期待する。

バルバトスは身の丈を越した大斧を構える。

来る。

目を凝らすと、長い髪を振り乱し手のみで這い蹲ってこちらに向かっていた。

悪魔が言える事ではないが、これはホラーだ。

「水……水を…く………ださい」

腰より下が魚の形をした姿に、バルバトスは知り合いと影を重ねた。

「ウェパルか?」

「そ…の声はバルバ…トスさん」

弱り切ったウェパルを見て、大斧をしまい一緒に狩りに来たレライエを、大声で呼んだ。

「バルバトス……兎が驚いて可哀相だった」

弓を担いだレライエが現れる。

「それはすまなかったな」

バルバトスはぐったりしたウェパルを抱き上げる。

「ウェパルか…魔力が切れたんだな……泉に連れて行こう…」

レライエの提案に、ウェパルは水から魔力を摂取していたのを、思い出し、バルバトスは頷く。

泉に着いてバルバトスは、泉に人魚を投げ入れた。

暫く俯せになって浮かんでいたが、むくりと起きて深く潜った。

様子を見ていたら、今度は魚を銜えて浮かんで来た。

魚の血が泉に滴り歪に水に溶け込むのも構わず、ウェパルは魚を無我夢中で貪っていた。

「ごちそうさまでした」

骨まで食べたウェパルは口の周りに付いた血を拭った。

「美味しかった?」

「はい美味しかったです」

レライエが尋ねると、顔だけ岸に上げて、ウェパルは満足気にヒレを動かす。

「良かったな。ところでよ何でウェパルが此処に?」

バルバトスは興味本位で、聞いてみた。

「ええとですね。バールさんがお二方に、地獄に帰って来いって言ってまして、それで私がお迎えに来ました。にしてもこの森広いですね。歩いてたら途中で魔力切れちゃいました」

えへへと、ウェパルは笑う。

バールがか。バールが。

レライエに目配せをしてバルバトス達はウェパルに背を向ける。

「一狩り行こうぜ」

狩人達は走り出した。

「あっ待って下さいっ!!」

しかし、泉の水が浮かび上がり、打ち付けられる。

もうこんなに回復していたのか。

バルバトスの予想に反し、逃走は失敗した。

「もーバールさんが怒ってます。逃げないで帰って来て下さいよ」

ぱしゃぱしゃと水面を叩いて、ウェパルは忠告をする。




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