Devil's story.

□犀飲蝿食
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誰かが、言った。

ベルゼブブとベヘモトでは、どちらが食べるのか。

最初は戯言だったが、他の悪魔達には疑問になり、その疑問は上級悪魔にまで広がっていった。

「気になるなら試せばいいじゃないか」

と軽率な考えの誰かが言った。
そして……



数え切れない程の悪魔達が、一つのテーブルに群がっている。

そのテーブルに座っているのは、迷彩柄の軍服を来た男と、蝿のようなガスマスクをした奇妙な男だった。

「本当に好きなだけ食べてもいいんだな?」

ベルゼブブは念を押すように、ベリアルにガスマスク越しで、尋ねる。

「ああ、いいさ。その代わり他の悪魔達で賭けもするから、見世物にはさせて貰うぜ」

ベリアルは周りの悪魔を見渡しながら言う。

成程、そのためでもあるのか。

「構わねえよそれくらい」

普段から食事の量を制限されている為、好きなだけ食事をするのは、嬉しい。

それはベヘモトも思っている事だろう。

ルシファーも、たまにはいいことをしてくれるではないか。

「まだ食っては駄目か?」

椅子の上で両膝を立てて座るベヘモトが耐え兼ねて、欠伸をする。

「じゃあ始めるか」

クスリと笑って、右手を上げた。

ベルゼブブはガスマスクを外し、ベヘモトは椅子に座り直す。両者とも本気でかかるつもりだ。

「「原型に戻っていいか?」」

料理が目の前に出されて、大食漢達は同時に言った。

蝿の姿なら人の形より、多く食べられる。

ベヘモトも同じ思考で、原型の犀のような怪獣の姿に戻ろうとした。

「流石に、地上や天界の食料も必要になるから、止めて下さいな」

残念ながら、それは料理を運んでいたゴモリーに制止された。

「なら仕方ねえ」

地上はともかく、天界のお世話になるのは嫌だ。

「右に同じ」

早速、手を付けているベヘモトが残念そうに言う。

テーブル一面に並べられた料理が無くなる頃でも、ペースは変わらずまた、運ばれたばかりの料理に手を伸ばす。




「今日は騒がしいな」

金貨を磨きながら、マイモンは呟く。

「まあ仕方ないんじゃない」

積み上げられた金貨の間に座るマイモンの丁度、隣に寝転ぶベルフェゴールは、足で金貨を崩す。

肘でベルフェゴールの頭を殴って、如何にも聞いて欲しいという口調に従い、マイモンは尋ねてやる。

「何でだ?」

「今日はベルゼとベヘモトがどっちが多く食べられるかって言う実験をするんだ。自分もトイレ掃除してる時に、聞いた話なんだけど……」

背筋に冷たい物が落ちたのを、マイモンは感じた。

あいつらが……

「何っ!?それはルシファーが許可したのかっ!!」

金が。金が…。

金貨が散らばるのも気にせず、マイモンは立ち上がる。

「知らない。自分も少し聞いただけだから」

「止めて来るっ!!!」

このままでは、地獄は破産してしまう。

金や金貨に囲まれた自室を、マイモンは飛び出した。




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