Devil's story.
□金と石ころ
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遅い。
いつもならば、とっくに帰って来てるはずなのに…
何かあったのだろうか?
「マイモン」
ベルフェゴールが面倒がりながらも、何時間も座って待っている者の名を呟いた。
ここは、マイモンが好む黄金以外の鉱石が置かれる場所で、鉄鉱石やスズ等が山積みにされている。他にもベルフェゴールが発明品の材料にする鉱物も沢山ある。タダで持って帰れそうだが、あのマイモンの事だ勝手に持って行こうとする輩に対する、仕掛けがあるだろう。
一緒にマイモンと山に、採掘に行っている彼の部下であるガープやセアル達の姿も、見ていない。
光の届かない地獄なだけあって、灼熱地獄等を除けば、割と寒い。
「早く帰って来いよ。アホ鴉」
寒さから来る苛立ちを混ぜ込んで、そう吐き捨てると、ベルフェゴールの背後で砂塵が舞い上がる。
振り返るとガープ達と山積みにされた鉱石だった。そこにマイモンの姿はない。
ベルフェゴールは溜息を吐く。
「あっベルフェゴール様だ。今日はいっぱい鉱石が採れたんデスよ。こっちも移送が大変だったんデスから」
こちらに気付いたセアルが、駆け寄って嬉しそうに言う。
「マイモンさんを待ってたんだそれも一日中…」
ボソリと余計な事を言うガープ。
「自分はマイモンなんて待ってないんだからな!勘違いするなよ仕事するのが嫌だからここにいたんだ」
何を必死に弁解をしているんだ、自分。赤面している事に気付き、ベルフェゴールは自嘲気味に笑ってそっぽを向いた。
「マイモンさんなら明日の準備してから戻って来るって言ってマシタし、もうすぐ来るんじゃないデスか?」
セアルが空を見上げる。
マイモンが自ら残って仕事をするのには、それなりの大きな儲け話が、あるのかもしれない。
「そうかわかった。
この自分がこんなに待ったんだ。存分に値切らせて貰うよ」
「ゆっくり話もするといいです」
ベルフェゴールが言葉を切った後、またガープが余計な事を言う。
「ガープ。人を無知にする能力を自分に使ってみたら、どうだ?」
「それは困るのでお断りします。」
口の減らない奴だ。
セアルは首を傾げて、ベルフェゴールとガープの様子を傍観している。
「ガープもう帰ろうか。ベルフェゴール様をからかったら駄目と思ウしよ」
「もう少しだけ」
「駄目」
未練がましくガープはベルフェゴールを見ていたが、セアルに移送されていった。
また一人になった。