together

□Let’s work!
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「ん……」


朝、スマホのアラーム音で目が覚めた。

寝たままスマホを操作してアラームを止める。


「ふぁ〜……」


上半身を起こしてその場で思い切り伸びをした。

そしてベッドから降りようと足を出しかけた時…



「………ん?」



私が目にしたのは碧い髪。

規則正しく寝息を立てて眠るその人物を見て私はもう一度布団の中に入った。


夢…見てるのかな……


目を閉じてそう思った時、昨夜の記憶が一気に呼び起こされて流れてきた。



「っ!!!」



今度はガバッと勢いよく上半身を起こして再び床を見た。


「ん……あ…ナマエ。おはよう」
「あ…ぁ……おはよう、ございます……?」

目を覚ました碧い髪の彼…エフラムは笑顔で挨拶をしてくれた。


ゆっ夢じゃなかった…!!


私は彼に背を向けて一人でガッツポーズを取っていた。

「ナマエ?」
「あっああ、ごめんね…!…どう?気分は…」
「気分か…正直体がいつもより軽いな。戦いをしてないせいか…」

私はその言葉を聞くと無意識に部屋の隅へと目をやった。


空いているスペースの壁に立て掛けられているエフラムの槍…レギンレイヴ。

そして彼が身につけていた鎧やマントを見ると、所々に傷が付いていて様々な激戦を潜り抜けてきた事が分かる。


「…あ、そうだ。私今日バイトがあるんだけど…」
「バイト…?」
「!ああ、ごめんね。バイトっていうのは…そうだね、お金を稼ぐためにお店で働く事かな。それでね、私この近くのお店で働いてるんだけど…良かったらエフラムもやってみない?」

私がそう提案するとエフラムは少し考える素振りを見せた。


「俺なんかが行っていいのか?恥ずかしい話だが…店で働くなんて、俺はした事がないんだ」
「大丈夫だよ。うちのお店はみんな優しい人達ばっかりだから!私がつきっきりで教えてあげますよっ」
「ふっ…それは頼もしいかもな。分かった、やらせてくれ」

こうして急遽エフラムのバイトデビューが決まったのだった。




「お待たせー!はい、どうぞ」


朝食をテーブルに並べ、エフラムはそれらの料理をしばらく眺めていた。

「料理はあんまり俺の世界と変わらないんだな」
「こっちでは大体こんな感じだけど、エフラムの世界にも似たような料理があるんだね。ちょっとびっくり」


朝食のメニューは目玉焼きにウインナー、トーストにサラダといった至って普通なものだ。

王族でも朝はこんな感じなんだな〜…


「じゃあ、いただきます」


手を合わせて朝食を取り始める。

「ん……うん、美味いな」
「本当?良かったぁ」


…まあ、今回は朝食だから正直手の込んだ料理は無いんだけど…

でも、基本的な料理でも褒められたらやっぱり嬉しいものだ。


「そういえばナマエは普段何をしているんだ?」
トーストを頬張りながらエフラムはそう質問をしてきた。

「私?私は…普段は大学っていって、色んな事を学べるところで勉強してるよ。今日は授業がないから休みなんだけど…後はさっき言ったバイトかな」
「そうなのか。学問を勉強するなんてえらいな…リオンを思い出すよ……」

その時、彼はどこか遠くを見るような…それと同時に懐かしむような顔になった。


リオン皇子…エフラムとエイリークの幼馴染で、心優しい青年だった。

だけど彼は……


何度プレイしても自分にはどうしようもなく、私はリオンを救えなかった事に胸が苦しくなった。


「…悪い、暗くなったな…」
「ううん、大丈夫」
「……なあ、ナマエはどんな事を勉強してるんだ?」

新たに話題を振ってくれて、私も切り替えてその問いに答える。

「主に外国の異文化について学んでるよ。自分の国にはない色々な習慣とかが知れて本当に面白いんだ」
「異文化か…俺は学問はからっきし駄目だが、確かに面白そうだな。それにお前に合っている気がする」
「えへへ…そうかな?」
「ああ、そうだ」


そんな風に言われるとやっぱり照れずにはいられない。



そして色々な事を話しながら食べ進めていき朝食を取り終えた。


「今日はこんな感じの服装で大丈夫かな〜」


私はエフラムに昨日買った服を渡した。

「わざわざすまないな」
「ううん、いいのいいの!私が好きでやってるんだし…じゃあ、私はあっちで着替えてくるからエフラムはここでいいからね」

私も服を持って脱衣所へと直行した。



「エフラム?着替えられた?」


私が着替え終わった頃に部屋に戻り彼の様子を確認した。

「ああ…こんな感じでいいのか?」

エフラムは渡した服をちゃんと着こなせていてまたもや卒倒しそうになった。


いや、私の服のセンスはアレかもしれないけど、極力今の大学生の男子が着そうな物は選んだつもりだ。

もうエフラムってば何着ても似合うんじゃないか…


「何であなたはそんなにかっこいいんですか?」
「かっこいいって…俺には分からんが、ナマエの方こそ似合ってると思うぞ」
「……」

私は両手で熱が集まった顔を押さえた。


ダメだ…この男の言動に慣れないと幸せな意味で本当にやばい…


それから私はささっとメイクをして準備を整えた。



「よし、準備完了!じゃあ、そろそろ行こっか」
「ああ、分かった。この世界の外はどうなってるんだろうな…」
「きっと驚くと思うよ?エフラムの世界にはない物がたくさんあると思う」
「そう言われるとますます気になるな」

私達はそんな事を言い合いながら家の玄関を出た。
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