together
□少女と王子
1ページ/4ページ
「お疲れ様ですー」
カフェでのバイトが終わり、私は挨拶を済ませて店を後にした。
時刻は21時を回ったところだ。
私は帰りに小さなスーパーに寄り、そこで遅めの晩御飯用に食材を買って帰宅した。
「ただいま〜…」
一人暮らしの家でもついそう言ってしまう。
私は靴を脱いで部屋に上がり台所に買い物袋を置いた。
「…いや、せめてご飯食べてからだよね……」
私はリビングに置いてある平たい本体と操作パッドのある白いゲーム機に目を向けて一人そう呟いた。
「ご飯も食べたし…お楽しみにといきますか〜!」
晩御飯を食べ終えた頃には既に22時を回っていた。
そして私はお風呂を後回しに、ずっと我慢していたゲーム機の電源を入れた。
画面に映し出された色々なアイコンの中で一つのアイコンを押す。
テレビ画面にも同じ画面が映し出されそちらに目を向ける。
“ファイアーエムブレム 聖魔の光石”
大きくタイトルロゴが映し出されると同時に流れるお馴染みのテーマソング。
それだけでもうワクワクが一層強くなるのはいつもの事だ。
「これをやらなきゃ一日頑張ったって感じしないからねぇ」
私は大学とバイトの疲れも忘れて上機嫌でゲームを進めていく。
ファイアーエムブレムというゲームが、私は大好きだ。
シリーズはほぼ全てプレイしたが、中でもこの聖魔の光石は本当に飽きる程やっている。
このゲーム機でもネットに繋げて行けるショップで聖魔の光石を購入する事が出来ると知った時、即座に購入をして今でも楽しんでプレイしているのだ。
私がこんなにも聖魔の光石にお熱な理由、それは…
「あぁ、やっぱりいつ見ても本当にカッコいいな〜エフラム…」
そう、このゲームの主人公の一人であるキャラクター…エフラムが大好きだからだ。
もちろんストーリーや他のキャラクターもとても魅力的だという理由もあるけど…
やはり最推しキャラがいるという点は譲れない。
「ここをクリアすればエフラムとエイリークのクラスチェンジだ…頑張るぞ〜っ」
今プレイしているのはエフラム編の16章…彼らが祖国のルネスを奪還するための戦いだ。
この戦いを切り抜ければ、エフラムとエイリークのクラスチェンジが待っている。
特にエフラムがマスターロードへ変わる時…ここまで来たな〜といつも感動してしまう。
「よし…後はオルソンだけ…!」
着々と他の敵を倒していき、残るは敵将であるオルソンのみとなった。
敵将からは多く経験値が得られるから、ここはやっぱりエフラムに撃破させたいなぁ。
私はオルソンの体力をギリギリまで色々なキャラを使って削っていった。
そして最後にエフラムにとどめをさせようとオルソンに攻撃を仕掛けた。
「これが決まればクリアだね。エフラムの体力は満タンだし…これで攻撃が外れて反撃を食らっても、オルソンの必殺は0で発動しないから死ぬ事はないよね」
私はそんな風に思いながら彼らの戦いを見守っていた。
するとエフラムの攻撃は外れてしまい、オルソンが反撃体制に入った。
「あー外れちゃったか…でも、次のターンで倒せれ…」
次のターンで倒せれば良い…そう思った時だった。
ズドォォン!
次の瞬間、オルソンからの反撃からはあの必殺が発動された際の音が響いたのだ。
エフラムの体力ゲージを見ると0になっていた。
『許せ…エイリーク』
エフラムの散り際のセリフが流れた後、彼は消えてしまった。
「…え?何これ…バグ?え?」
今までこんな事がなかったため、私は半分パニックになっていた。
何より私はゲームオーバーになった事よりも、エフラムを死なせてしまった事に深く傷付いていた。
「この謎現象は何なの…何か怖いけど……取り敢えずもう一回やり直そう…」
私はリセットをしようとゲームパッドの画面をタップした。
「…あれ?反応しない…」
タップしてもメニューが出てこないのだ。
私は少し焦って何度も何度もタップをし続けた。
その時…
ドサッ
「え……」
後ろから何かが落ちて来たような音がして振り返った先には…
「ぅ……な、なんだ…?俺は…どうなって……」
そこにはついさっきまで画面越に見ていた碧色の髪をした青年…エフラムがいたのだ。