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□第六章 結び合う想い
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「…リオン…俺は……」


エフラムが力なく親友の名前を口にした直後、私達が来た道からエイリーク達が走ってきた。

「兄上、ナマエ…!…!?大丈夫ですか?」
「エイリーク、か…いや……何でもない」

エフラムの様子を見たエイリークはひどく驚いていた。
誰がどう見ても何でもなかったようには思えないだろう。


「で、ですが…ひどく青ざめた顔をなさっておられます…何かあったのですか?ナマエ、兄上に一体…」
「それは…」

今ここで話すべきなのか。
いや、私が言ってしまっていい話ではない。
それ以前に…先程あった事をエイリークも知ってしまえば、間違いなく彼女も…


「…エイリーク」


その時、エフラムが弱々しい声で彼女の名前を呼んだ。

「はっはい?」
「リオンは…リオンは俺の親友だ…いつまでも、ずっと……」
「とっとにかくここを出ましょう。ラーチェル達が心配しています。ナマエ、兄上を…」
「はい…エフラム様、立てますか…?」


変わらず力が抜けたようにそう呟くエフラムに、エイリークは困惑しながらもこの場所から移動しようと話す。
私はそっとエフラムに声を掛けて肩を貸すと、彼はふらりと立ち上がった。

そのままラーチェル達の待つ所まで歩いて行くと、エフラムはそこで立ち止まる。

「すまない…ここで大丈夫だ。ありがとう、ナマエ…」
「エフラム様…」

私から離れ自分の力のみで立つ彼は、今にも崩れてしまいそうに見えた。


「…敵はこの断崖を越えていったようです」
「この絶壁…私達ではとても上れるとは…」
「逃げられた、という事か…」

目の前に広がる断崖をみんなが見上げる中、ラーチェルだけは明るい声で話し出す。

「落胆なさる事はありませんわ。この山を越えた先は闇の樹海…そこにはロストンから行けますもの。それに、最後の【聖石】はロストンにありましてよ。【聖石】が一つでも残っている限り、まだ負けた訳ではありませんわ。さあ、元気を出して出発しますわよ」


ネレラスの溶岩窟を抜け、私達はロストン聖教国へ向かって進軍を再開する。
その道中、エフラムはずっと思いつめたような表情をしていて…
私は何もする事が出来ず、ただ彼の様子を傍で見守る事しか出来なかった。

そしてやっとロストンへ到着し、宮殿の中に入ると王の間ではマンセル教皇様が迎えてくれた。
玉座に座るそのお姿からは威厳の中に穏やかさを感じる。


「帰って参りました。懐かしい我が宮殿ですわ。叔父様、ただいま戻りましたわ」
「おお、ラーチェル!よく無事で帰った!」

ラーチェルの姿を見たマンセル様は顔を綻ばせてとても嬉しそう。
家族が無事に帰ってきてくれるのはいつだって笑顔になるものだ。

「当然ですわ、叔父様。正義が邪悪に敗れるはずがありませんもの」
「うむ、まったくもってその通り!して、その者達は…」

マンセル様はラーチェルの後に続くエフラム達に視線を向ける。


「ロストン聖教国教皇マンセル様。初めてお目通り致します。私はルネス王女エイリーク。フレリア王国からの使者としてここへ参りました」
「俺はルネス王子エフラム。エイリークと共に今この世界に迫る危機を伝えるため参りました」


エフラムとエイリークは一歩前に出て跪く。
そして顔を上げた後、状況を説明すべく口を開いた。


「実は…」


二人は事情を全て話し終えるとマンセル様は頷いた。

「…ふむ、事情は分かった。にわかには信じがたい話ではあるが…闇の樹海の魔物どもが勢いを増している事は私も聞いておる。ラーチェル。正義を為すためにはロストンの【聖石】が必要なのだな」
「はい、叔父様。ついては神殿の封印を解く許可をいただきたく思いますわ」

真剣な目で話すラーチェルに彼はもう一度深く頷く。

「うむ…しかしラーチェル、そう急ぐ事もあるまい。幸いここは聖領、ゆっくり身体を休めるが良かろう」
「でも、まずは【聖石】を確認しませんと落ち着きませんわ。とにかく封印が無事かどうかだけでも…あ」

今までマンセル様の方を向いて話していたラーチェルは、突然思い出したようにこちらを振り返る。
そしてエフラムをじっと見た後に再び前を向いた。


「どうしたのだ?」
「やはり一晩休ませていただきますわ。今は皆様とても疲れていますの。特に私の友人はとても辛い事があったようで…」
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