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□第六章 結び合う想い
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「……」

魔王が私達の前に姿を現した。
彼は何も言わずにこちらを見つめると、すぐに奥へと姿を消す。


「あ、エフラム様…!」


彼を追い掛けるために駆け出したエフラムを見て、私も反射的にその姿を追い掛ける。

私が行ったところで何も変わらないかもしれない。
けど…もしも聖石を守れるチャンスが少しでも生まれれば…



「待て!魔王…」


二人に追い付き、近くの岩場の陰に身を寄せる。

エフラムは魔王を呼び止めていた。
魔王は溶岩の上に浮いていて、まるで忌々しいものを見るような視線をエフラムに向けている。


「ふん…来たか」
「…お前を倒す前に一つだけ聞く。リオンは今、どこにいる?お前を倒せば…リオンは元に戻るのか?」 

槍を握りしめたまま聞くエフラムに、魔王は嘲笑うかのように答える。

「くく…それはかなわぬな。既にリオンなどこの世のどこにもおらぬ。あの者の心は、我が残らず食らい尽くしてやったわ」
「貴様…!」

許せる訳がない言葉を吐かれ、エフラムは槍を持つ手により力を入れた。
その手は今にも魔王を貫かんとして震えていて…

「ふん、何を怒る?今更あの弱者の事などどうでもよかろう?何も出来ずに我に食われた無力で愚かなあの皇子など…」
「黙れ!リオンは俺の親友だった。俺とあいつはいつまでも友達だ。そう約束したんだ。貴様はリオンの心を奪い、リオンの存在を冒涜した。俺がこの手で倒す!」


エフラムが魔王に攻撃を仕掛けようと動いた時、彼は地面に現れた魔法陣に囚われ身動きが取れなくなってしまう。
体の自由を奪われ、彼は突然の事に動揺の色を見せた。

「ぐ…っ…!?な…身体が…」
「抗うな。お前はもはや動く事すらかなわぬ… やはり、ルネスの【聖石】はお前が持っていたか…では、破壊させてもらうとしよう…」

魔王はエフラムのすぐ傍まで移動すると、彼の持っている聖石へと手を伸ばす。


今だ…!


「…エフラム様っ!!」

それを見計らい、岩場から飛び出した私は意を決して二人の間へと駆け出した。
予想外の私の登場に、エフラムは目を大きく見開かせてこちらに叫ぶ。

「ナマエ!?よせ、来るな!!」

今回ばかりは彼の命令であっても聞けない。
私は魔王が聖石を手にする間際、それを横から取ってみせた。


「あなたに聖石は渡さない…!」
「小娘が…余計な事を。聖石を渡せ。さもなくば…」

私に向かって手を伸ばす魔王に恐怖で足がすくんでしまう。
だけど…聖石を守らなきゃ…!


「やめろ!彼女に手を出すな!!逃げろ、ナマエ!!」


エフラムの声で一瞬我に返り、私は聖石を持ったまま走り出そうとした。

「ふん…無駄だ」
「!あっ…!」

ガクンと、一気に地面へと吸い寄せられるような感覚が襲う。
まるで重力に押し潰されそうな、とてつもない圧を感じて身動きが取れない。
そんな私の元に魔王はゆっくりと近づいて来る。

「余計な手間をかけさせるな、小娘」
「やめ、て…っ」
「ナマエ…!」


「ふ…もう遅い」


パキン、と音を立てて目の前で砕かれた一つの希望。
それはあまりにも儚くて見逃してしまいそうだった。
聖石が…魔王の手によって破壊されてしまったのだ。

守れなかった…
やっぱり、変えられないの…?


「あ、あぁ…」
「やはり異端者が足掻いたところで何も変わりはしない。残念だったな」


冷たく笑うその顔に、私の背筋は一瞬で凍りつく。

この人は…私が行動を起こす事を分かっていた……?
一体どこまで知っているというのだろう。
まさか…私が異世界から来た人間だと唯一知っているのなら、私にとってこの世界がどうなのかという事も……
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