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□第三章 待ち受ける者
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そして玉座の間に近づいてきて残るはグラド皇帝…ヴィガルド様のみとなった。


なんだろう、この感じ…
なんとも言えない恐怖が押し寄せてくる、そんな感じがした。

この時点でヴィガルド様はもう…


「ヴィガルド!何故ルネスを侵略した!何故父上を……!」
「………」


ヴィガルド様はエフラムの問い掛けには何も答えずただ黙っている。

「答えろ、ヴィガルド!…やはり、もうまともな状態ではないのか?」
「………」


何を言っても口を開くどころか、顔色ひとつ変えない。

本当に…ただの人形みたいに。

そしてエフラムがヴィガルド様に攻撃を仕掛けたが、守備力が高いため普通の槍ではダメージが中々通らない。

「では、ここは優秀な私が」

そこへルーテがファイアーを二回連続でヴィガルド様へと放ち、見事反撃も避けてみせた。
そのおかげで彼の体力はだいぶ減ったみたい。


「助かった。これなら…はあぁっ!!」


エフラムはレギンレイヴをヴィガルド様目掛けて思い切り貫いた。
ヴィガルド様は…相変わらず無表情のまま。


「………」


「なんだ…これは…?ヴィガルドの死体が…一瞬にして灰に…」

彼の言う通りヴィガルド様は今まで人間の形を保っていたが、次の瞬間それは灰へと姿を変えてしまったのだ。


こんなの、驚くのも無理はないよね…


「おそらくは、闇魔道の類でしょう」

ゼトが落ちた灰を少しすくい上げながらそう話す。


さっき戦ったヴィガルド様は…やはりもう本物ではなく、作られた存在だった。
そして、それを生み出したのは…


「ともかく帝都制圧は完了しました。私は城内を調べて参ります。残敵がいないとも限りませんので」
「俺も行こう。城のどこかにリオンがいるかもしれない」

エフラムとゼトは城内を調べにこの場を去って行く。


私は…しばらくその場を動かずに、城の奥へと消えて行くエフラムの背中を見つめていた。


これからエフラムは受け入れがたい真実を聞かされるはずだ。

彼の幼馴染みで親友の…グラド帝国の皇子から……


「ナマエ?どうしたの?」


そこへターナが私に声を掛けてきてくれた。

「ターナ様…」
「何か気になる事でも、ある?」

そう聞かれて思わず視線を逸らす。


気になる事…
エフラムはきっと彼と話している頃だろう。

そんな事、もちろんターナには話せないけど…


「分かった。エフラムの事でしょう?」
「え…」


図星を突かれて思わずドキッとしてしまう。
ターナの顔を見ると、その顔はどこか楽しそうに笑っている気がする。


「ふふ、当たりね?だからエフラムが行った後ずっと見てたんだ」
「ぅ…」


まさか見られてたとは…
私は少し恥ずかしくて俯いた。


「いいんじゃない?後をついて行っても。ナマエなら大丈夫よ」
「ターナ様…」

それ以上は特に何も聞いてこないターナに、私は改めて彼女の優しさを実感した。


ターナ…ありがとう…


私はその場で彼女に一礼すると、エフラム達が向かって行った方へと走り出した。
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