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□第二章 勇気をくれるのは
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「ミルラ…どうかしたの?」
私は向こうでゼトと話すエフラムを見つめたままのミルラに聞いてみた。
多分…あの石の事、なんだろうけど……
「ナマエ…私の石が…東の方から感じるんです」
「石?」
「はい…私にとってすごく大切なもので……」
やっぱり…竜石の事だったんだね。
その竜石はグラド兵に騙されて奪われてしまって、その時に連れて行かれそうなところをエフラムが助けてくれたんだっけ。
「私、あの石が無いと……でも…」
ミルラ、迷ってるんだよね…
彼女は今の自分の立場を十分理解している。
だからこそエフラムに中々言い出せない。
その葛藤故に彼女が今後どう行動するのかも…私は分かってる。
正直、私はミルラに何と言ってあげればいいのか分からなかった。
私に彼女を守れる力があれば、一緒に行こうと言ってあげられたかもしれない。
でも…今の私はやっと回復の杖が使えるようになったばかりだ。
もしついて行ったとしても、道中敵が現れないとも限らない訳で。
だからこそ……何も言えなかった。
「敵船が来る…!全員、近接戦の準備を!」
エフラムの声にはっと我に帰る。
気付いた時には深い霧の中から一隻の船が現れていた。
その船には人間ではなく、たくさんの魔物達の姿が。
本物の魔物だ…
正直かなり怖いけど…ただ怯えているわけにはいかない。
「ナマエ、出られそうか?」
皆がそれぞれ戦闘準備をする中、エフラムが私に声を掛けてきた。
「あ…はっはい。大丈夫です」
「よし。約束通り君は俺が守ろう。決して俺の傍を離れるなよ」
そう言って私に手を差し出してくれる。
また…胸が締め付けられた。
元の世界で彼を想っていた時とは違う…
……ううん、今はこんな事考えている場合じゃない。
私は強く頷くと彼の手を迷わず取ったのだった。
戦闘が開始されると、魔物達は一斉に襲ってくる。
相変わらず霧も深くて周りがよく見えない。
このままではこちらが不利なままだ。
「!トーチの杖…」
私は船が出る前、ヴァネッサからトーチの杖を受け取っていたのを思い出す。
本当に扱えるのかは分からない…けど……
私は少しの希望に賭けてトーチの杖をその場でかざす。
すると杖の先端が赤く光り、次の瞬間パァッと大きな光が辺りに広がったのだ。
そして広範囲の霧が晴れ、見える魔物達の数も一気に増えた。
「!周りの霧が… ナマエ、君がやってくれたのか?」
私を背に戦っていたエフラムがこちらに振り返りそう問い掛けてくる。
「出来るかは少し不安でしたが…扱えるみたいでよかったです」
「君には才能があるのかもしれんな。この調子で頼む!」
「はい!」
良かった…ちゃんと役に立ててる……
ずっと強張っていた体が少しだけ解れていく気がした。