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□第七章 消えない光
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「我の技を食らっても尚立ち上がるか…忌々しい」


ついに魔王の目の前にまで辿り着いた。
赤い眼光をさらに光らせて、私達を見下すかのように言葉を吐き捨てる。

「時に小娘。お前は本当にこの世界にとどまるつもりか?」
「え…?」

魔王の話の内容と目がこちらに向けられている事から、奴が私に聞いているというのはすぐに分かる。


「最初からお前がこちらに来なければ、リオンもこのような目には合わなかったであろう。それをお前が現れた事で、奴の運命は変わったのだ」


その言葉に心臓が嫌な跳ね方をした。
私が…私のせいで、リオンが……?



「小娘…今からでも遅くはない。我にその命を捧げれば、リオンを蘇らせてやろう」



視界がどんどん暗くなっていく感じがする。
周りの音も聞こえなくなって、ただ魔王の言葉だけが頭の中で繰り返されていく。

私がこの世界に来ても運命が変わらなかったんじゃなくて…
私が来た事でリオンは魔王に…?
奴の言う事が本当なら、私はとんでもない事を犯してしまった。


私の命一つで…全て、元に戻るのなら……



「目を覚ませ、ナマエっ!!」



その時、手をグッと引かれると共に力強い声で意識を現実に戻された。
見ると、エフラムが真剣な顔で私の目を真っ直ぐ見つめている。

「騙されるな。魔王の言う事は全て偽り… ナマエの命を奪う事で、奴は自分の力とするつもりだ。お前がこの世界に来た事で運命が変わったなんて、そんなのあるはずがない。リオンは…もうどんな事をしても蘇ったりはしない。だから、俺達であいつの遺した想いを守るんだろう?」
「!そう、です……すみません、私…!」


よく考えれば魔石の力を持ってしても、一度死んだ人を蘇らせるなんて事は不可能なんだ。
ヴィガルド様やモニカさんの件を思い返せばそれは明白な訳で。

もう迷わないと誓ったはずなのに…
一瞬でも魔王の言葉に踊らされた自分を恥じて咄嗟に謝った。

けれど、そんな私にエフラムは首を横に振って優しく笑ってくれるんだ。


「お前は、お前の信じるものを信じていればいい。俺もナマエを信じているからな」
「エフラム様…はい」


また、エフラムに救われた。
私がどんなに暗闇の中に居ても、彼はいつだって光で照らしてくれる。

上から手を差し伸べて…引き上げてくれるんだ。


「ぬうう…大人しく言う事を聞いていればいいものを……」
「絶対にナマエを奪わせはしない。もう、誰も失う事のないように……魔王…貴様は俺が倒す!」

ジークムントを片手にエフラムは魔王へと立ち向かっていく。
双聖器は魔物に対して非常に有効だけれど、相手の体力は計り知れない。


「貴様達の力はその程度のものか!」
「ぐっ…!」


反撃に魔王の拳をくらい、エフラムはまたも大きな傷を負ってしまう。
私はすかさずその傷を杖で癒す。
身体に負った傷が塞がっていくのと同時に、本人の調子が元に戻るのを見ると、やっぱり安心するのは変わらないな。


「ありがとう、助かる」

「兄上、私達も戦います!」
「一人で成敗しようなんて、水臭いですわ!」
「私も手を貸してやろう」
「私だって、やる時はやるんだから!」
「頑張ってみます…」


するとエフラムに続いて、エイリーク達が次々に魔王へと攻撃を仕掛けていく。
双聖器を持つ仲間達からの攻撃はやはり強力なのか、魔王も段々と怯み始めてきた。

きっと、あともう少し…!


「エフラム様、今です!」
「ああ!」


思わずそう叫べば、彼は頷いてもう一度魔王へと立ち向かう。



「これで終わりだ!はあぁっ!!」



エフラムは大きくジークムントを振り回して、思い切り魔王の身体を貫いた。

訪れたのは、一瞬の静寂。



「グオォォォォォォ…!!」



魔王は叫びながら徐々に消えていく。
その様子を私達はただじっと見つめていた。


そして一瞬、真っ白な光が辺りを覆った後…



魔王はこの世から完全に消え去った。



〜続く〜
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