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□第六章 結び合う想い
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魔王の行方が北へ向かったとの報告を受け、私達は闇の樹海を取り囲む烽火山ネレラスへ向かった。
ネレラスの中に入れば、今まで感じた事のない凄まじい熱気が襲ってくる。
こんな溶岩が流れる場所なんて初めて来た。

みんな何で平気なんだろう…


「あっ暑い…」
「大丈夫か」


暑さで思わず少しだけフラついた私を支えてくれたのは、意外にもクーガーだった。
私は内心驚きつつも、慌てて体勢を整え彼に向き直る。

「あ…すっすみません…!」
「別に謝る事じゃない。この暑さ…俺もさすがに堪える」
「クーガーさんも?」
「ああ。…別にクーガーで構わない」

そう言ってくれるのは、彼の優しさからだというが分かる。
私は嬉しく思いながら、お言葉に甘えて呼び捨てにさせてもらう事にした。


「それにしても…やけに進軍速度が速いな。後ろの方がついて来れていない」
「そう…みたいですね…」


クーガーの言う通り、ナルーベを発ってからの進軍はとても早足だ。
その理由は、先頭を歩くエフラムとその後ろをついていくラーチェルの会話で分かる事。

ここからでは内容までは聞こえない。
だけど…ゲームと同じ会話がされているのなら、何も言えなくなってしまう。
エフラムの気持ちは痛い程伝わってくるから…


「今…エフラム様は計り知れない程の苦しみと戦っておられます。私は、あの方の苦しみに寄り添いたい。押し潰されてしまわないように…だから、どんな道を進まれようとも、私はついて行くと決めたんです」
「………」

クーガーは私の顔をじっと見つめると、少しだけ目を細めて笑ってくれた。
その事に呆気に取られていると、彼はまた歩くのを再開する。

「本当に強くなったな、お前は。その調子なら平気そうだ」
「!はい…!」


「こちらです!敵はこの谷の奥へと入って行きました!」


しばらく歩いて兵に案内されたのは、辺りが溶岩で彷彿としている谷。
さっきよりも一段と暑さが増す中、漂ってくるのは熱気だけではない。
そんな中エイリークは辺りの匂いを嗅ぐような仕草をした。

「兄上、何か臭いませんか?」
「臭い?」
「はい。硫黄のような不快な臭いがします。谷の奥から漂ってくるような…」


彼女の視線が奥に向けられつられて見ると、大きな卵のようなものが複数あるのが分かる。
卵の表面にある赤い模様は血管のようにも見えて何とも不気味だ。


「あれは…卵…?」
「魔物の卵です…すごくたくさん…」

ミルラが何の卵かを教えてくれた。
こんな熱い中で育つなんて、さすがとしか言いようがない。
思わず感心していると、その卵が小刻みに揺れ始める。

「兄上!あの卵、次々に動き始めて…」
「まさか奴は俺達をここに誘い込むために…全員気をつけろ!こいつらはただの卵じゃない!」


複数あるうちの一つの卵が殻を破りその正体を現す。
上半身は人間で下半身は蛇という姿をした魔物…ゴーゴン。


「エフラム様、あの魔物は相手を石化させてしまう能力を持っています。くれぐれもお気を付けてください」
「石化だと?それは厄介だな…分かった、気を付けて戦おう。…ナマエ」

名前を呼ばれて彼と目を合わせる。

「魔王を追うためとはいえ、少し無理な進軍をしていた…体は平気か?」
「!…はい、私は大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

こんな時でも気遣ってくれる優しさに胸が熱くなる。
だからこそ、私はエフラムについて行きたいと思うんだ。


「そうか。よし、行こう」


魔物を掃討すべく、私達は武器を手に意識を切り替えた。
魔物はゴーゴンだけじゃない。
ビグルやガーゴイルといった、また別の厄介な魔物達もいる。

ここの魔物達を全て倒した先に…魔王はいるんだ。
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