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□第一章 差し伸べられた手
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「…ん…あれ……」



目が覚めた。
体は重く、頭も何だかくらくらする。

どうやら私が横になっているのは地面のようで土と砂利の感覚が痛い。

起き上がろうと腕に力を入れて何とか上半身を起こしてみた。


「……ここは………?」


まだ整い切らない意識の中で辺りを見渡せば、見た事のない景色が目に入る。
木々が生茂る森林のようなものがあるかと思いきや、そのすぐ近くにはとても大きな建物が。

一体この建物がどんな所なのか見当もつかない。


というか…何で外で寝てるんだろう…
頭の中で記憶を巡らせても、中々思い出す事が出来ない。



「なんだ?貴様何者だ!」



急に大きな声が聞こえ驚きながらも反射的にそちらを振り返る。
そこにはこちらに駆け寄って来ている二人の男性が。


それだけなら特に不思議ではない。


だけど、私はその二人にとてつもなく違和感を覚えたのだ。


「こんなところで何をしている!」
「あ、え…?」


その男性達は茶色い鎧のようなものを身に纏い顔も兜で覆われている。
そして何より今私に向けている鋭い先…槍と思われるものに軽く恐怖を感じた。


こっこれ、本物…?
というかこの人達は何なの……?
何で私、こんなもの向けられて…


「怪しい奴め…連れていくぞ!」
「!?ちょっ、何するんですか!?離してください!!」


完全にパニックに陥っている中、私は一人の男性に担ぎ上げられそのままどこかへ連れて行かれてしまう。


待って待って、本当に意味が分からない。

そもそも私は何でこんな所にいるの?
ここは……一体どこ…?
もしかして何かの映画の撮影にでも巻き込まれたとか…?

今必死に様々な考えを巡らせても、この状況が変わる訳ではなくて。


私の必死の抵抗も虚しく、どうやら私はあの大きな建物の中に連れて来られたみたいだ。

乱暴に下されると逃げられないようにか腕は掴まれたまま。



「ゲブ将軍、要塞外部にいた怪しい者を捕らえました」



ん……?
今、ゲブ将軍って言った…?


そう思った矢先、奥から出てきた人物に思わず目を疑った。



「なんだぁ?またフレリアの手先かぁ?」



太っていてお世辞にも綺麗とは言えない容姿に、特徴的な話し方…
そして何よりゲブという名前。

私はその人物にとてつもなく見覚えがあった。

それにフレリアって……


「な…」
「なんだこの珍妙な格好はぁ?んんん…?よく見たらお前もいい女ではないかぁ。ぶふふぅ…」


思わず顔をしかめてしまいたくなるその人物。
間違いない…私の記憶が正しければ、この人は……


「この女も牢に閉じ込めておけぇ。今夜は良い夜になりそうだぞぉ。ぶふふふふぅ……」


私が頭の中であれこれと記憶を巡らせているうちに牢へと連れて来られてしまった。

「ここで大人しくしていろ!」

相変わらず乱暴に牢へと入れられてガシャンと鍵が閉められる。
多分膝とか擦りむいてるだろうけど、正直気にしている余裕はない。


私は去っていく鎧姿の男性の後ろ姿をただ呆然と眺める事しか出来なかった。



「…ねえ、貴女」



突然可愛らしい声が牢に響き、ぼーっとしていた私を我に帰らせた。
声のした方を向けば、さっきよりも強い衝撃を受けてより目を見開く。


「貴女、誰?どうして捕まっちゃったの?」


青色の長い髪をポニーテールにしていて、サイドには三つ編みが結われている。
大きな青い瞳にピンク色の服を着た少女。


私は…彼女を知っている。
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