Short2

□『聖なる夜への小さな願い』
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「一兄っ! 今日サンタさん来てくれるかな?」
「ああ、遊子が良い子にしてたら、サンタさんもきっと来てくれるぞ」
「ホント? じゃあ、私もう寝るね!」

そう言って、遊子は半ば興奮しながら、双子の夏梨を引っ張って行く。
夏梨はと言うと、

「サンタなんかいないって」

と子どもらしからぬことを言っているが、その実、少しは期待しているんじゃなかろうか、と思ったりする。
流石に俺なんかはサンタがいるなんて信じちゃいないが、俺も子どもの頃は本当にいるものだと思っていた。

「サンタ、か……」

自分の部屋に戻って、一息つく。
サンタの存在など、どこか遠い存在のようだ。実際、夢物語だからその通りなのだろうが。

「ってと、俺も今日は早く……」
「何だ、もう寝るのか?」
「ああ、今日は結構疲れたし……って、ん? うええぇっ?!」

今普通に会話してたけど、誰だよ!? って、さ、サンタ!?
いや、待て。サンタなんかこの世にいる筈ないんだ。あれはただの夢物語なんだから。
でも、じゃあ、目の前にいるのは……。

「おーい、大丈夫かー?」

ひらひらと俺の前で手を振るそれは、格好だけで言えば紛れもなくサンタクロースで。
固まっていて動けない俺は、当然のように言葉も出ない。

「さ、サンタ……?」

漸く絞り出した言葉は、自分でもまぁ、間抜けな質問だと思う。
でも仕方ない。それしか言えないんだから。

「そ! お子様の夢を叶えてあげる、まさしくサンタだ」
「………えと、ウチに何か用、ですか……?」

自身をサンタだと言う銀髪、グリーンアイのちょっと不良っぽい、いや、いかにも不良っぽいサンタを警戒しながら、とりあえず用件を訊いてみる。
多分何かの間違いだ。ウチにサンタを雇う余裕はない。

「何、って…願いを叶えに、だろ?」
「願いって……」

クスリと笑うサンタの顔は、嘘を言っているようにも思えない。
だったら、もう二度とないかもしれないこのチャンス。ダメ元で童心に返るのも良いかもしれない。

「願い…俺の願い、叶えてくれるのか?」

笑いながら頷くサンタに、俺はごくりと唾を飲み込んだ。





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