Short2

□『黒板に書く君の名前』
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放課後の誰もいない教室。シン、と静まり返っている教室は、嫌いじゃなかった。
普段のざわついた雰囲気も嫌いじゃないが、こっちの方がもっと好きだった。

「…どれくらいかかるんだろ、あと…」

机に突っ伏したまま、一護はポケットに手を滑り込ませた。携帯を取り出して時間を確認する。
デジタル表記の時計の時刻に、思わずため息が零れた。

「まだ10分しか経ってないや…」

呟いてみて、更に項垂れた。
俺って、こんなに待ちきれないタチだったっけ?
自分で考え込んでから、ああそうか、と納得した。これは、アイツのせいだと。

「何だよ、それ…俺は恋する乙女か?」

いや、あながち間違ってはいないが。
好きだって告白されて、最初はもちろん断った。何たって男だし。でも、甲斐甲斐しく世話を焼いてくるアイツに、いつの間にか俺も好きになってて。気が付いたら、今度は俺が告白して…。

「〜〜〜〜〜ッッッ!」

瞬間にして頬は赤く色付いた。頭の中では、更に思い出した記憶が重なってくる。
何を考えてるんだ俺は。
顔を赤くしたまま、一護は首を左右に振った。こんなのは俺らしくない、と。
もう一度ため息を零して、一護は頭を冷やすために席を立った。

「顔洗ってこよ…」

項垂れながら教室を出ようとした時、教卓の上に白のチョークが置いてある事に気が付いた。
恐らくHRの時に担任が使って、そのまま教卓に置きっぱなしにしたのだろう。
一護は顔を洗いに行く事も忘れて、そのチョークを食い入るように見つめた。何気なく手に取る。

「白…って、違う! しかもアイツは“白”じゃねえし!」

白に見えなくもない。だけどアイツは“銀”じゃねえか。
そう考えて、また顔が熱くなった。そんな事まで気にするなんて、完全に乙女化してるな、と。
チョークを持ったまま、一護は暫くどうでも良い事ばかり考えていた。






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