Short2

□『黒板に書く君の名前』
2ページ/3ページ

「………って、何で俺がこんなに悩まなくちゃいけないんだよ」

思わず舌打ちする。
違う、違う、チガウ。こんなの俺じゃない。俺はもっとフツーの…。
ゆるゆると首を振って、しかし、あれ、と首を傾げた。
フツーの俺って、どんなんだった? 何で? 思い出せない。

「ッ………」

どんだけ感化されてるんだよ、俺。
バクバクと心臓が激しく鼓動する。心なしか、体温が上昇してきたようだった。
一護は再び首を振って、チョークを元の場所に戻そうとした。しかし、その手は宙でピタリと止まったまま動かなくなった。
そして何を思ったのか、一護は手にしていたその白のチョークで黒板に文字を刻み始めた。


「日番谷冬獅郎」


黒板に書かれた文字はたった六文字だった。しかし、書いて初めて、一護はソレに気付いたと言わんばかりに赤面した。

「ッ! な、何書いてんだよ俺はっ」

チョークを放り投げ、慌てて黒板けしでその文字を消した。
顔が赤面する。体温が上昇する。心臓が、自分のモノじゃないかのように鼓動した。
そんな状態で後ろからガラリと音がしたものだから、一護の心臓は飛び上がった。

「あわわわわっ」
「一護? 何やってんだ?」

当然、教室に入って来た人物は、そんな一護の挙動不審っぷりに疑いの眼差しを向けた。

「と、冬獅郎…」

名を呼ばれて、冬獅郎は更に眉間の皺を深くした。疑いの眼差しを向けたまま、冬獅郎は一護に近づいた。

「? 委員会終わったぞ。帰るんだろ?」
「あ、ああ…」
「ホントにどうかしたのか? 顔が赤いぞ?」
「えっ!? い、いや、そんな事は…」

顔を逸らす一護に、嘘付け、と冬獅郎は言いたかったが、面倒なので止めた。






次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ