短編小説A

□オヤジの悩み
1ページ/6ページ


「ちょっと、クー。どうしたのさ、アレ」

「……さあ?」

「ジェイ、何か知ってるか?」

「残念ながら」

「どうしましょうかねぇ」

「取り敢えず、声かけてみたらどうじゃ」







オ ヤ ジ の 悩 み








特に用事のないある日の事。

いつものように自然に、ウィルの家に集まったメンバー達を迎えたのは、彼の溜め息だった。

溜め息だけなら、皆それ程気にしなかっただろう。

ウィルが纏う黒く重い空気に、言葉をかけられなくなったのだ。


「お兄ちゃん、遅くなっ……どうしたの?」


部屋の入り口付近に立ち止まっているセネル達。

部屋の奥から流れてくる黒い空気。


「シャーリィ……。実は……」


事情(と言っても、ウィルが落ち込んでいるらしいという事しか知らない)を説明した。


「いつもの事でしょ」


そう言うと、勝手に湯を沸かし、お茶を入れ、ソファで寛いだ。


「えー! ウィルさんが!?」

「……」


どうつっこめばいいのか分からず、取り敢えず黙ってみた。


「そういう事は、早く言ってよ!」

「言ってるから!」

「ウィルっち、どったの〜?」


部屋の隅に座り込んでいるウィルに立ち向かう(?)勇敢なノーマ。

ウィルがどう返すのか、固唾を呑んで見守るメンバー。


「フッ。まないた」

「Σ!!」


空気が瞬間冷凍されたような気がした。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ