短編小説A
□風邪ひきヴァン師匠
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肌寒い朝。
「くしゅんっ」
と可愛らしい(?)くしゃみをしたのは、とても○○歳には見えないヴァン・グランツ(本名、ヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデ)主席総長。
「どうやら、風邪をひいてしまったようだな」
風邪の典型的な症状を訴える体にそう呟いた。
風邪ひきヴァン師匠
「いいか、お前達!今すぐティアを連れて来い!」
「……は?」
いきなり呼ばれたかと思うと、前置きのない言葉を投げつけられる。
頭の周りを飛ぶクエスチョンマークを消そうとアッシュが尋ねた。
「一体、どういう事だ」
「今日の会議が急に中止になったのは、知ってるな」
「突然だったからね」
「五分前に、中止って言われた……です」
六神将が集まったのは、ヴァンの私室の前。
廊下に六人集まると、狭い。
「実は、閣下が風邪を――……」
「何!? ヴァンが風邪だと? よし、みんなボコるぞ!」
「準備は出来てるよ」
「アリエッタも、です」
「うむ。日頃の恨みを晴らすか」
「またとない機会ですからね!」
ヤル気満々な五人。
「お前達、何を言っている!」
「じ、冗談だ」
「真に受けないでよね」
「ダアト流ジョーク……です」
「本気なワケないだろう」
「そうですよ。風邪で寝込んだのがジェイドなら別、です……が[何かを感じ取るディスト]」
「私も混ぜろ!」
「はぁ?」
今のは、本当にリグレットの口から出た言葉だったのか。
自分の聴覚を疑ってしまう。
彼女は何か勘違いをしたのだろうか。
彼らは、ヴァンをボコると言っていたはずだが……。
沈黙が支配する廊下。
シンクがふと口を開いた。
「リグレットって、ヴァンの事好きじゃなかったっけ?」
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