LOG:OUT

□プロローグ:プロローグ
1ページ/1ページ

チリン…



暗い闇の中で、小さな鈴が鳴った。



「もう、はじまるの…?」



闇の中、浮かび上がるように存在する白い天蓋付きのベッドから
顔も身体の特徴もわからない声が1つ、感情を感じさせない声でつぶやいた。



チリン…



声の主のものであろう紫色の瞳に、白い手が写る。



「これでもう―回目なのね」



声にしたであろう数字はうまく聞き取れないほどに小さい。



瞳に映る白い手から、小さな鈴―先程のものだろう―がこぼれ落ちた。



なんの変哲もない、ただの鈴だ。



ベッドには2人いる。



片方は瞳の色しかわからないし、もう1人がどんな人かもわからないが。



―…



鈴のこぼれ落ちた手が、徐々に深紅の花に包まれていった。




「待ち人 約束の地に 降り立つ時」




残った方の少女がなにかに聞かせるようにぽつりと言う。




「沈黙を破る 鐘の音は響く」




「朋友の刃は 紅く煌めき」




「滴は」




「彼の地への 道を刻む」





ため息が漏れる。




「始めの、手助けをしてあげる」



少女はそれだけを言うと、水が落ちる間もなく姿を
消した。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ