PandoraHearts
□愛故の行動
1ページ/1ページ
『エリオットー!』
その掛け声と同時にエリオットを襲うのは抱きつかれた衝撃のみ。
「お前はまた…!」
完全にエリオットの顔は引き攣っている。
しかし、++++はそんなこともお構いなしテヘッなどと言っている。
「少しは恥を知れぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
今日もエリオットの叫び声がラトウィッジに響く。
僕から見た二人はそれはそれは仲のいい幼馴染だった。…最初の頃は。
でも、共に過ごす時間が長くなればなるほど++++のスキンシップが過度なことが分かった。
抱きつく、腕を組む、不意打ちでキス…なんだってアリなのだ。
++++にとってこれが過度なのか普通なのか僕には分からないんだけどね。
そんな++++が落ち込んで図鑑コーナーなどという滅多に人が来ない書架の隅で膝を抱えている。
エリオットのストーカーでもしているとばかり思っていたから僕一瞬戸惑ったよ。
まぁ、声かけたんだけどね…。
「++++、珍しいね。こんなところにいるだなんて」
『うん…』
「どうしたの?」
『…叩かれた』
「…ほっぺ?」
『…うん』
主語がなくても誰に叩かれたかくらいなら僕にも想像はつく。
「どうして?」
『くっついたら…ぱんって。』
「…だから過度なスキンシップはダメって言ったのに」
『昔はよかったんだよ?昔は可愛かったのに…』
じゃあ、今のエリオットは可愛げがなくなったのか、と聞けばそんなことはない、と断言する++++。
この一途さがどこからきているのは僕にはいまだに分からない。
「どうして、++++はエリオットにそんなにスキンシップをするの?」
『嫌われたくないから』
「逆効果なんじゃ…」
『置いていかれたくないの』
「え?」
『いつも、いつもいつもエリオットばかり先を歩いていて…いつもいつも私ばかり必死にエリオットの跡を追いかけて…隣で歩いていたいだけなのに…』
そこまで言うと++++は顔を伏せてしまった。
僕は++++の言うことがどういうことなのかすぐに理解できた。
確かにエリオットは努力家だし、負けず嫌いだ。だから、++++のことなんて考えずに先へ行ってしまう。
それについていくのは、努力家でもなければむしろ能天気な++++にとっては大変なのだろう。
(でも、エリオットはなぁ…)
どちらかと言えば誰かと肩を並べて歩くというよりも少し先を歩くほうが好きなのだろう。
二人の思いがすれ違っているのは薄々気付いていたがまさかこんなところでもすれ違いがあるだなんて。
「隣を歩きたいなら、++++が頑張るしかないね」
『…分かってるよ。分かってる。それでも、隣を歩くまでに私が成長できない』
「うん」
『そんな自分が一番嫌い、大嫌い。』
「うん」
『…でも、自分も愛せない私だから…だから、きっと…』
"エリオットの愛情に比例した愛を返せないんだと思うの"
そういって微笑む++++の頬には涙が伝っていた。
すれ違いがすれ違いを生んで、愛っていうものはなんて面倒なものなんだろう。本当、めんどくせ。
愛が生んだ行動により、その愛が崩れる。
もし、誰かが僕に愛を語れというのなら僕は真っ先にこの言葉を言うだろうね。
でも、この二人の愛は崩れるんじゃない。伝わりきらないんだ。互いを互いを愛しすぎてね。
愛故の行動
(愛をあげて倍の愛をもらう男)(愛をもらって倍の愛を返す女)
(しかし、その女は愛を返しすぎて男に叩かれた)(けれど、最後はその男が王子のように迎えにくる)
(…なんて、どこの御伽噺だよ。このバカップルめ)(リア充爆発しろ)
------------------------------------------------
ちょっと歪な愛もまたいいと思うんだ