PandoraHearts

□君の心を利用して手に入れた幸せは
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エリオットが、死んだ。



それでも世界はぐるぐるぐるぐると回ることをやめない。
まるで回り続けることが宿命だとでもいうように。


それは僕も同じで自分が"リーオ"という存在であるということを受け入れて前へ進んだ。
長く伸びた前髪を切り、エリオットにもらった眼鏡も外した。
久しぶりに見た世界は綺麗だけれど醜くて哀しくなった。


でも、僕の目の前にその事実を受け入れられない人がいた。
++++=****。彼女は彼を愛していた。愛して愛して愛し続けた。
血塗られた彼の死体を見て彼女は呟いた。





「おはよう」





と。
その言葉に周りが驚かされたのはいうまでもない。
でも、彼女は気が狂ったんじゃない。彼がいない世界を認められないだけなんだ。


彼女は僕に言ったことがある。
"エリオットは私の太陽なの。一緒にいるとね、こんな私でも生きてていいんだって言われてるみたいで…"
そう言って彼女は微笑んだ。


彼女は元は捨て子だった。
しかし、顔が整っていたために貴族に引き取られたが、体は痣だらけだった。
そんな彼女の太陽になったのはエリオット…彼だったんだ。


そんな太陽が消えた世界で彼女が生きていけるはずがないのだ。
だから、どうにかして太陽があるという幻を生み出し立ち上がらなくてはいけなかったのだ。


そして、次の太陽になったのが……僕。
でも、それは決して彼女が"僕"という存在を見ているわけではない。
僕が彼の従者だったから…僕も彼女と同じように彼を慕っていたから…それだけの理由。


『あ、おかえりなさいエリオット!』


「ただいま、++++」


例えその偽りが彼女にとって、僕にとって辛いものだとしても…


『最近リーオ見かけないね』


「そうだな、あいつはほら…弱いから…」


それでも彼女に真実を伝えようとしない僕はいいように彼の心を、彼女の心を、利用しているだけなんだ。


僕がどれだけ愛しても愛しても手に入れられなかったその笑顔を、僕が"エリオット=ナイトレイ"になることによって手に入れられた。




君の心を利用して手に入れた幸せは
(日々を重ねるごとに辛くなっていくんだ)
(それはきっと彼からの罰なんだ)(彼の心と彼女の心を利用した僕への罰…)
(彼の心と彼女の心を利用した僕の…)(一生許されることのない罪)




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15巻を読み返すたびに胸がきゅぅっーと締め付けられる気分になります。
16巻のリーオがジャックにぐさっとされるシーンも辛いです、かなり。

 

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