PandoraHearts

□旋律に勝つのは
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最近エリオットはどこにいても悩んだような顔をしている。
どうしたの?、と聞けば母上の誕生日にプレゼントする曲が思いつかない、と言う。
そういえば毎年プレゼントしてるんだっけ…旋律ってそう簡単には浮かばないもんね。



そうして今日も私と彼は控え室で昼休みをうだうだと過ごしていた。
今日も、とは言うが普段は一緒にいることは少ない。ここ最近はエリオットはリーオ連行の元毎日のように図書室へ訪れていた。
私はその様子を中庭から友人と見ているだけだったけれど、今日はリーオがエリオットを投げ出したので一緒にいるのだ。
本を黙々と読む私に対し、エリオットはソファの上でずっと云々言っている…かなり悩んでいるらしい。
すると、エリオットが突然ソファから立ち上がった。


「出た!」


『なにがっ!!?』


リーオに進められた推理小説『二重螺旋の祝祭』を読んでいた私は突然のエリオットの発言に驚いた。


「旋律だよ!出たんだよ!浮かんだんだ!」


そう言うと否やすぐに五線譜を取り出しすらすらと書き出していく。
いったいどうしたというのだ。


『エリオット、どういう「今話しかけるな」…あ、はい。』


なによ…久しぶりに一緒にいられるっていうのに…五線譜が彼女か!コンチキショー!!!
…そんな悪態吐いたってエリオットから離れられなくなってるのはきっと私のほうなんだ。


(エリオット生き生きしてるなぁー…)


こんなに生き生きしているエリオットを見たのは久しぶりかもしれない。
16年間幼馴染やってきて、突然彼女になっちゃった私だけど…うん、やっぱり久しぶりかもしれない。


「あ」


『?、どうしたの?』


「ノート持ってないか?丁度なくなったんだ…」


『あー、あるよ』


そう言ってカバンをちょっと漁ればすぐに出てくる。
私だって兄様の誕生日には簡単な曲だけれどプレゼントしてるんだから五線譜ぐらい持ってます!


『はい』


「ありがっ…っておい!」


エリオットがノートを手にしようとした瞬間に私が避けたのでエリオットの手は空をかいただけだった。


『別に渡さないわけじゃないよ?』


「…じゃあ、なんだよ」


『だって、久しぶりに一緒にいるのに五線譜が彼女みたいなんだもの』


そう言えば何言ってんだ、という表情になった。
本当エリオットって感情が表に出やすいよね、そういうところも好きだけど。


『少しは構ってくれてもいいんじゃない?私が構ってちゃんなの、エリオットだって知ってるでしょ?』


「いや知ってるけど…」


そういってエリオットは少し困ったような顔をする。
今頭の中に浮かんでいる旋律を逃したくないんだと思う。
だから………


『私が寂しいからこうしてるっ!』


「ばかっ!くっつくな!///」


無理だよ、寂しいんだもん。
そう言ってエリオットを背中から抱き締める。私より広いその背中を見つめてエリオットも成長したんだなぁ、と昔のことを思い返す。
エリオットが成長したことに喜びと同時に寂しさというか悔しさ?…がある。
まぁ、これが寂しさなのか、悔しさなのか分からないけれど…そんなことはもうどうでもいい。
今は相手にされない寂しさのほうが大きいのだから。


ぎゅっーと抱き締める力を強くするとエリオットの手の動きが止まった。
どうしたのかと思い五線譜を覗き込むと視界がくるりと回転し、私の目の前には頬を赤くしたエリオットと天井があった。
つまり、押し倒されて馬乗りになられてる感じ…?


『え、エリオット…?』


「お前なぁ…!オレだって男なんだよ!」


『う、うん…?』


そんなのは分かってる。
いくら幼馴染って言ったって君が男の子なんだってことぐらい理解してますよ?


「好きな女にそんなことされたら抑え効かなくなるっての!///」


つまりは男相手にそういうことをするな、といいたいのだろうか?


『抑えなくても…いいんじゃない…?』


なんて答えればいいのか分からなくてこう言ってしまったことを数十秒後に後悔することになる。


「…んっ」


『ひあぅっ!』


突然首筋に顔を寄せてきたと思ったら舐められた。
ちょ、ちょちょちょ待て待て待て!そういうことだとは理解してたけど今するの!?今ヤるの!!?


すると、突然廊下側のドアが開いた。


「エリオット、聖騎士物語最新刊でて………あ。」


入ってきたのは図書室に行っていたリーオだった。
私もエリオットもリーオの姿を目の前に硬直した。


「あぁ…二人も大人の階段のぼってたのね、失礼しました。」


それだけ言うとリーオは何事もなかったかのように控え室をでていった。
エリオットは一瞬彼を追いかけようとしたけれどすぐにそれをやめて私を見た。


『はいぃ!!?』


「…もう仕方ねぇ、のぼるぞ」


『いやいやいやいや待て!待つ、まって…ぅあ…んぅ…』


もう私はこの人の理性に勝てないようです。




旋律に勝つのは
(私だったけれど他の色んなものに負けたようです。)
(ぅあ…えり、んぅ…)(もっといい声で啼けよ)(うぁぁ…!)
(あーあ…あんなところで大人の階段のぼっちゃって…エリオットも野獣だったのね)



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そして二人は授業をサボりました。
キャーは ず か しっ!!!(//´凸`//)

 

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