パンドラハーツ

□lightning
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「うわぁ…向こうの空見て、天気悪すぎだよね。」


「こりゃ午後降られるな。」


『うわー…雨嫌いだわー…』


朝、ラトウィッジに向かう途中でリーオが空の異変に気付いた。
忙しくて天気予報も見ずに来てしまったのが失敗だったか、傘すら持ってきていない。


(降られる前に帰るしかねぇな)


朝はそんな風にしか考えてなかったんだ。
位置的に降るのは夕方だろう、ならそれまでに寮に戻ればいいだけだ。





























「めちゃくちゃ降ってるよ、エリオット」


「…今何時だよ」


「五時半」


「…なんでこんな時間になったんだ!!!!!!」


「それは、僕は図書室に寄ってたからだね」


「寄るなって言ったよな!オレは!」


「まぁ、所詮エリオットの言うことだからねー」


「お前はなぁ…って、どうしたお前…」


人の制服の裾引っ張るなとも言いたかったが、****が妙に怯えた顔をしていたのでぎょっとした。


『雨嫌い…雷嫌い……』


あ、そういうことか。
何かといって小さい時から弱点がないと思われがちな****だが、割と女らしく雷が怖い…というか嫌い。
光るのとか音とかそういうのが嫌なの!って子供ん時に言われた覚えがある。


「とりあえず、これじゃあ帰れないね」


「お前のせいでな!」


****があまりにもひしひしとくっついてくるので剥がすのに苦労してんだ、この野朗。
少しは手伝え、お前はオレの従者じゃねぇのか。まったく…。


「うーん…二人は図書室でも行ってきたら?」


「は?なんでまた…」


「下校時刻までいれば先生が送ってってくれるよ」


「あぁ…そういうことか」


確かに。しかも、ここ貴族しか通ってないしな。
教師達も送っていくしかないと諦めるということか。


「まぁ、何時になるかは知らないけどね」


「あ、そう…で、お前は?」


「僕?僕は小降りになったら走って戻るよ」


「じゃあ、オレm「エリオットはダメだからね」はぁ!!?」


「****がいるんだから、幼馴染でしょ?一緒にいてあげなよ」


「はぁ…」


幼馴染、俺達から取れない肩書き。
まぁ、別にいいんだけどよ。そういう肩書きでも一緒にいられるなら。


「多分、図書室は誰もいないと思うけど」


「そっちのほうがいいだろ、****だってあんな姿見られてんだから」


先日あった事件での****と今の****のギャップは周りには強すぎるのではないかと。


「じゃあ、気をつけろよ」


「うん、じゃあね」


とりあえず腰にまとわりついてる物はスルーして図書室へ行こう。
なんか唸ってるけど、知るか。





























『寒い…』


「お前なぁ…」


図書室についたけどもリーオの言った通りに生徒なんて一人もいなかった。
図書委員も帰ったあと…つか、さっきリーオと来たときからいなかったか。


「電気つけるから座ってろ」


そう言って引っぺがそうとすると一層強い力でくっつかれた。
****さん…肋骨折れる、マジ折れる。


やっぱりくっついてるものはスルーで電気をつける。
面倒だから全部つけときゃいいよな。


『停電になったりしないかな…』


****は時々聞こえる雷鳴と時々見える稲妻を見たくない、聞きたくないとでもいうように窓に背を向け耳を軽く塞いでいた。


「なんないだろ…さすがに。」


停電なんてものになった日には****は暴走だぞ。
落ち着かせるとかそういうのはオレじゃなくてリーオが得意だからやめてくれ…。
オレだけじゃ対処しきれん。


その時、蛍光灯が突然消えた。
いや…まさかの事態ですか、これ。


『ひっ…………』


ひっ?
****の声はそれ以降まったく聞こえなくなった。


「おい、****いるのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」


突然足掴まれたぞ!なんだ今の!


勢いよくしゃがむと机の下に****がいるように…見える。


「****か?」


『イエス…エリー助けて…怖い…』


お前、だからって突然人の足を…まぁ、今はいい。


「とりあえず出て来い、リーオがまだ戻ってなければその内来るだろ」


『怖いよ、エリー怖いよ、怖い怖い怖い怖い怖い雷嫌い怖い怖い雷嫌い雷嫌い……』


「落ち着けっ!」


そう言ってすでに暗闇に慣れた目で****を見つけ、頬を叩く。
ごめん、少し強く叩きすぎた気がする。


『えりぃぃぃ…うぅぅぅぅぅ………』


完全にダメだ、こりゃ。


「大丈夫だ、一人じゃない」


小さいとき、雷が鳴る度にヴァネッサがこうやって****を励ましてるのを思い出した。
これは、オレがやっていいことなのか分からんが…幼馴染を放り出すほどオレはひどくない、はず。


『エリー…いる?』


「今、お前の目の前にいるのがオレだ。アホ」


それを聞くと何故か人の顔をぺたぺたと触りだした****。
何の確認だ、これ。


『ほんとだぁ…』


「…お前酔ってんのか?酒どこで飲んだ?」


『飲んでないよ!未成年!』


いや、もう呂律が回ってませんでしたよ****さん。


書架に凭れ掛かって****を抱き締めていると昔のことを思い出す。
どちらかといえば昔は****の方が大きかった。
悪戯をして隠れるのもいつも****の後ろだった気がする。まぁ、主に主犯はオレじゃねぇしな。
それが今じゃ立場が逆転か…すっぽりと足の間にはまるくらい****が小さくなったのか、オレが大きくなったのか。
まぁ、誰がどう見ても後者だろう。


『エリー』


「あ?」


『電気点かないの?』


「さぁな」


ここらへんはあまりまわりに住宅がない。まぁ、当たり前といえば当たり前なのだが。
とりあえず、図書室から見える場所は一応全部電気が消えている。


『…エリー成長したよね』


「そうだな」


『背、高くなった』


「あぁ」


『声、低くなった』


「あぁ」


『頼りに、なる』


「あぁ」


『強くなった、剣もてるようになった』


「あぁ」


『聖騎士物語が好きなのは、相変わらずだけど』


「まぁな」


『従者、いる』


「…それはオレの成長に関係あるのか?」


『あるよ、それだけエリーが大人になったってこと』


「…そ、そうか」


いまいち理解できんが、まぁいい。


『つまりね…』


「つまり?」


『昔より好きになったよ、私が』


「…そうか」


なんか、さらっと恥ずかしいこと言われた気がするけど気にしないでいこう。


『昔の約束覚えてる?』


「約束?なんの?」


『…お嫁さんにしてくれるって』


「〜っ///あ、あれはっ…!」


『嘘?』


「いや、その…」


まさか****が覚えてたなんて。
オレの中で一番恥ずかしいこと言った思い出を掘り返すなっ!


確かに、昔****を嫁にするとは言った。
…まだ6歳かそのぐらいだった気がするが。


『分かってるよ、私みたいな上級貴族じゃない家の子が四大公爵家の嫡子と婚約なんて無理だって』


…確かに、****の家は昔からナイトレイを影で支えてきてくれたが上級というほどの上級ではない。
ただ、四大公爵家"ナイトレイ家"を影でバックアップしていただけの家。誰の目にもそううつるのだろう。


『それでもね…』


そこまで言うと****は口を閉ざした。
すると蛍光灯がパチパチ…とまた光り始めた。


『あ、電気ついた…帰ろう!エリー!』


「あ、あぁ…」


『あ、そうだ!さっきの続き聞きたい?』


"それでもね、まだ夢見る乙女でいたいの!エリーのお嫁さんになれるって夢を。"


それだけ言うと****は図書室を駆け出していった。
まぁ、オレが返事するよりも先に言ってしまうところが****らしい。


…畜生、言い逃げか!


オレだけが一人しゃがみこんで真っ赤になるなんてバカみてぇじゃねぇか。




lightning
(玄関まで戻るとまだリーオがいた。)
(まだいたのか、小降りになってんだろ)(うん。それよりもエリオット、さっき****すごく真っ赤な顔して出ていったよ。何したの?)(何もしてねぇよ)
(本当かなぁ…エリオットも野獣だかr(おい、どういうことだ))(なんでもないよ)
(****をあそこまで素直にさせたのは雷鳴のおかげなのか、それとも……)




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今日、午後の授業を受けていたら山のほうの雲がめちゃくちゃ黒かったので。
それからこうに繋がるってどういうことなの(((( ;°Д°))))

ちなみに02で書いた恥ずかしい記憶というのがお嫁さんにすると言ったことです。
やっと繋げられた…!

 

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