小説集

□ナモナキセカイ〜僕の世界〜
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全てが初めてだった。
全てが始まりだった。
音、それは僕に声をくれた。
光、それは僕に心をくれた。
色、それは僕に僕をくれた。
そして_____
彼女はその全てを僕にくれた。
でも彼女は一体何故僕にこんなことをしたのだろう。
なぜ僕がわかったのだろう。
なぜここまでしてくれたのだろう。
・・・・・なぜ僕のほしいものを持っていたのだろう。なぜわかったのだろう・・・・・・
なぜ、なぜ、なぜ・・・・
考えても僕には答えがわからない。まだ不完全だから?
まだボクは僕になりかけだから?
音があっても。光があっても、色があってもボクは僕になれないの?
ふと彼女を見る。全てを持っている彼女を。
「さぁ・・・これが最後の贈り物。これでキミは君になれる。そして私は戻る。君に・・・ね」
やわらかく微笑んだ。
彼女は僕に戻るといった。最後だといった。
僕にはわからない。だって不完全だから。足りないから。でも、なぜだかボクはうっすら微笑んでいた。
自分でも気づかないうちに・・・・。
「うん・・・・そう、だね・・・。もう・・・終わりに・・・しよう」
そう口にしていた。自然と・・・。不思議なくらい自然に。
終わりそれが何を意味しているのかよくわからなかった。
でも、それがボクになるためなのだということはわかった。
手を伸ばしてくる。彼女が僕に。
ボクが手を伸ばす。彼女へとゆっくり、ゆっくり。
そしてゆっくり双方一緒に瞳を閉じる。
重なる。彼女と僕の手が。
混ざり合う。彼女の音とボクの音が。
溶け合う。彼女の光と僕の光が。
染み渡る。彼女の色と僕の色が。
そして・・・・
『さようなら・・・ボク。おかえり・・・僕。ありがとう・・・私。』
言葉が重なる。手が、色が、音が、光が・・・僕と彼女が。


瞳を開ける。そこにはもう「彼女」と言うなの「ぼく」は居なかった。
瞳を開ける。そこにはもう「セカイ」と言うなの空っぽの空間はなかった。
代わりにあるのも・・・・それは・・・・
僕の世界。
友達の笑顔がある。家族の暖かさがある。そして・・・・
僕自身が居る。僕の心がる。
彼女は僕が無くしたぼくだった。ボクは僕が捨てたぼくだった。
そして僕は壊れていた。真っ暗な空間・・・ナモナキセカイと言うなの自分の闇の中で壊れていた。
僕・・・それはボクが僕になる最後の世界。彼女・・・それはボクが僕になるための道しるべ。
すべての世界が僕の世界。
すべてのセカイが僕の闇。
ただいま・・・僕の世界。さようなら・・・ボクのセカイ。
それはボクが僕になる瞬間。
それは彼女が僕に戻る瞬間。
最後のボクが僕になるための世界だ・・・・。
ただいま・・・僕の世界よ。

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