One day

□One day 3
1ページ/1ページ

最悪な日っていうのは、こういう日を言うのかも知れない。































その日は朝からツイてなかった。
目が覚めてみれば、遅刻決定の時間。
急いで署に向かえば、昨日の雨でぬかるんだ道に嵌り、
新調したばかりのスーツは裾が泥だらけになった。
そんな状態でも急いでいったにも関わらず、近藤課長の機嫌は最悪で。





「遅刻するとは、大したもんだなぁ。なぁ、…町田?
自覚が足りんからだ、この大馬鹿者ーーーーーー!!!」





と、いつもの三割増のお説教。

逃げ出すように先輩達を捜しにパトロールに出れば。
目の前を歩いて行く見知らぬ男と、…見知った彼女。
突然の状況に上手く思考が回らず、彼女に声をかければ。





「透が仕事ばかりで私を放っておくからでしょ!!!」





と、平手打ち。
目の前には男の勝ち誇った嫌らしい笑み。
彼女の肩を抱いて、連れ去るように歩いて行く。
頬に残るジンジンとした鈍い痛み。
呆然とした頭でパトロールに戻ろうと振り返れば…。
































ゴールドの車から、ひらひらと手を振る姿が見えた。



「よう、男前!」



運転席から笑いを堪えた声が聞こえる。
見られたくない場面を、一番見られてはいけない人物に見られ、
町田はガックリと肩を落とした。



「まぁ、修行が足りないって事だろ?」



紫煙を吐き出しながら、サングラスの顔が意地悪く歪む。
その声にがくりと垂らした頭を持ち上げると、助手席のドアが開いた。

「鷹山先輩?」
「関内で発砲事件だとさ。ストレス発散には、丁度良い…だろ?」

そう言って、鷹山は後部座席を指差した。





明日には、今日の出来事は面白おかしく署内に広がっている事だろう。
分かっているのは、明日は驚異上に最低最悪な日だという事。

だから。

だからこそ、町田は息を吐き出すと目の前の顔に促されるように後部座席へ乗り込んだ。



―――関内で暴れる可哀相な可哀相な犯人で、憂さを晴らす為に…。



終。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ