パレット

□【月飼い】
2ページ/7ページ

一年前のちょうど今頃、同じような満月の夜だった。




『月を飼うの。この水槽の中に…』

「えっ、何?」

『だから…月を飼うの!!』




そう言って彼女は水槽に水を汲み始めた。
そして、一番月の光の当たる窓辺に置いた。


『ほら、見て!!月を飼ってるみたいでしょ?この前、月を眺めながら思ってたんだぁ…』


時計を見ると、午前3時。
僕は、ただ眠いばかりだった。



『……ねぇ、聞いてる…?』

「ん…ぁ、あぁ……聞いてるよ。
………そろそろ寝ない?」

『本当に聞いてたかなぁ…。先に寝てて良いよ?あたしはもうちょっと月を見ていたいから…━』



彼女は飽きる事無く、水槽の中の小さな月をずっと眺めていた。とても嬉しそうだった。




『ねぇ、もう寝ちゃった?』

「う〜ん…寝ちゃったよぉ〜…」

『嘘、起きてるじゃない…


ね、朝って好き?』

「朝ぁ…?別に嫌いじゃないケド…。」

『あたしは、朝嫌い』

「…なんで?」


『だって、どんなものも輝いて見えるじゃない。
全てが希望に満ちて、素晴らしいもののように見える。

でも…それって本当?
本当は絶望だったり…嘘だったりするかもしれな
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ