パレット
□【月飼い】
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一年前のちょうど今頃、同じような満月の夜だった。
『月を飼うの。この水槽の中に…』
「えっ、何?」
『だから…月を飼うの!!』
そう言って彼女は水槽に水を汲み始めた。
そして、一番月の光の当たる窓辺に置いた。
『ほら、見て!!月を飼ってるみたいでしょ?この前、月を眺めながら思ってたんだぁ…』
時計を見ると、午前3時。
僕は、ただ眠いばかりだった。
『……ねぇ、聞いてる…?』
「ん…ぁ、あぁ……聞いてるよ。
………そろそろ寝ない?」
『本当に聞いてたかなぁ…。先に寝てて良いよ?あたしはもうちょっと月を見ていたいから…━』
彼女は飽きる事無く、水槽の中の小さな月をずっと眺めていた。とても嬉しそうだった。
『ねぇ、もう寝ちゃった?』
「う〜ん…寝ちゃったよぉ〜…」
『嘘、起きてるじゃない…
ね、朝って好き?』
「朝ぁ…?別に嫌いじゃないケド…。」
『あたしは、朝嫌い』
「…なんで?」
『だって、どんなものも輝いて見えるじゃない。
全てが希望に満ちて、素晴らしいもののように見える。
でも…それって本当?
本当は絶望だったり…嘘だったりするかもしれな