おはなし

□狼なんか怖くないっ!
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廊下に響く靴音さえも怖い。
確かに、乾先輩といる事で少しは怖くないけれど。

先輩の背中が、どこかへふっと消えてしまいそうで…


怖い。
コワイ。
こわい。

「…ン?どうした?」

気付くと海堂は乾のシャツの裾を掴んでいた。


目に、涙が滲む。


「…それじゃ持ちにくいだろ。ホラ。」
さし伸ばされた手に、自分の手を重ねる。
手だけじゃ足りなくて、乾の背中に腕を回す。


怖い
こわい
コワイ。

溢れる涙を、乾は丁寧にふき取った。


「よしよし。怖くない、怖くない…」

「――……」
誰かの話し声がした。
このままではマズイ、と、乾は海堂を抱えたまま近くの教室に隠れた。

通りすぎるのをまち、息を潜める。

通り過ぎた事を確認して、海堂に話しかける。
「もう大丈夫。さぁ、そろそろ行こう?」
「…ダ。」
「え?」
「もう少し…このまま…。」

乾は複雑な表情で海堂をみつめた。
「あのなぁ…お化けより先に、狼に襲われるぞ??」
「別にいい。だから…ッ」
意味を理解していないのか、しているのか、
俺を困らせたいのか、天然なのか。
乾は困り果て、取り敢えずこのまま落ち着くのを待つことにした。



+++


「乾と海堂、おっそいにゃぁ〜??」
「ふふふ。きっと狼男に襲われたんだよ。」

ホントに襲われたのか、それはご想像にお任せします笑。
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