おはなし
□夏
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「みんなッコレなーんだ??」
そういって菊丸が差し出したのは、一本の笹だった。
僕らの夏が、終わろうとしている。
夏。
「うおッ!?そんなの何処で手に入れたんすか?」
「秘密〜♪へへッみんなちょっとばかり早いけど…」
メンバー全員にすばやく手渡されたのは、一枚の紙だった。
「ソレに願い事書いて!!」
七夕…か。
夏が来る事の意味を、皆知っていた。
少なくとも俺は
夏が来る事を誰よりも拒んでいただろう。
この関係が壊れる。
ソレが一番怖かった。
テニスを除けば、俺と海堂に繋ぐものは1つも無くて。
壊れるのを恐れて、感情を抑えていた俺に、
夏が来るのはあまりにも早かった。
「海堂は何書くの。」
覗き込んだ紙に書かれていたのは
『優勝』
の一言だった。
「ははっ海堂らしいね」
「うるせぇ。」
「好きな人と両思い、とかないんだ?」
「…どうせ叶わねぇし。」