薄桜鬼*ひと恋めぐり

□忘れられない
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あまりの胸の鼓動の強さに喉が苦しくなってきた。


…私、…なんで?もう平助くんが居るんだから…例え永倉さんに会ったとしても、大丈夫でしょ?
この緊張は、何?会いたいの?会いたくないの?…何を期待しているの?


そうこうしているうちにエレベーターは7階で止まった。
胸の音が周りに聞こえてしまいそうなほどに強く強く鳴る。
しかしドアが開いてもそこには誰も立っていなかった。
どちらとも言えないため息が口が出た。
エレベーターには私以外にもう一人乗っていて、その人が“閉”のボタンを押した瞬間――


『ちょ、ちょっと待ったぁぁああ!!まだ閉めねぇでくれよっっ』


―――!!!!!
…聞き間違えるはずはない。もう…4ヶ月も聞くことなかったけど…。私がこの声を忘れるはずがない。


涙がうっすらと滲み、俯いた時、ガタンッとエレベーターのドアに大きな手が触れ、ドアはもう一度大きく開いた。
そう、その手の主は……


『悪ぃな、間に合わねぇかと思っ……た、ぜ……』


永倉さんの視線が私を捉えたのに気づいた。だから私は必死に笑顔を作って会釈した。
永倉さんは私の隣に少し離れて立った。エレベーター内はシンと静まり返っている。
一緒に乗り合わせていた人は次の8階で降り、永倉さんと二人きりになり、更に俯く私の頭に永倉さんの声が降ってきた。
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