薄桜鬼*ひと恋めぐり
□ガールズトーク
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顔を見なくても、声を聞かなくても…
ちゃんと覚えてる…
瞼の裏に残ったままの、あの太陽みたいな眩しい笑顔…
耳の奥に記憶されてる、あの明るくて優しい声…
そして大きな手のひらから伝わるぬくもりも…
ちゃんと体が覚えてしまっている…
気を抜くとすぐに永倉さんの事を思い出しちゃってだめだなぁ…
話題を変えようとして、ふと疑問に思ったことを口にした。
『ねぇ、お千ちゃんて彼氏は?』
いつも私が相談するばかりだったから、お千ちゃんの恋バナってあんまりしたことなかったんだよね…
そんな私の質問にお千ちゃんは難なく答える。
『うん、いるよ?今は…仕事で海外に行ってるからなかなか会えないんだけど……、まみちゃんと平助と初詣の約束してた日に急に帰ってくることになって…だからあの日断っちゃってごめんね?』
両手をパチンと顔の前で合わせペロリと舌を出すお千ちゃんの様子があまりに可愛くて、彼が帰ってきた事が本当に嬉しかったんだろうなぁって伺えた。
『ううん、気にしないで!!いつか会わせてね?彼氏に』
お千ちゃんは頬をピンクに染めながら照れくさそうに頷いた。
久しぶりの女子会に私たちのお酒を呑むペースはいつもより早く…。
『でもさぁ、正直……まみちゃんと永倉さんはうまくいくもんだと思ってたんだよね〜』
酔いが回ってきたお千ちゃんが虚ろな目で私を見る。
『なんか悔しいなぁ……、まみちゃん!!綺麗になって永倉さん見返してやりなよっ!?まみちゃんフッた事後悔させなくっちゃ!!』
お千ちゃんがコツンと私の手にあるグラスに自分のグラスをくっつける。
綺麗になって見返す、か…
『うん、お千ちゃん、そうだねっ』
永倉さんが私をフッた事を後悔する日が来るとは思えないけど…、うん、綺麗になって見返してやりたいって思う。
…それはまだ気持ちが残ってる証拠?
諦めるって決めたんだ。
私を想ってくれてる平助くんを好きにならなきゃ。
その方がきっと、きっと…幸せに違いない。
何かの雑誌に載ってた。
“女の子は愛するより愛される方が幸せ”だって…。
だから、私は平助くんと幸せになるんだ……。