薄桜鬼*ひと恋めぐり
□口づけの意味
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私の唇に、永倉さんの唇が押し当てられていた。
……なんで……?
だんだんと深くなる口づけに必死で抵抗した。
それでも永倉さんは口づけを止めることはなく、激しさを増すばかり。
『…っ…んっ…』
息が苦しくなり、ほんの少し開いた唇の隙間から必死に空気を吸い込んだ。
…永倉さんの気持ちがわからない…何でこんな事するんだろう……あの時、体を重ねた時には唇には触れもしなかったのに……
涙がツーッと頬を伝いながらも、永倉さんの激しい口づけにだんだんと体の力が抜けてくる。
そんな私の体を永倉さんは包み込むように支えてくれていた。
どれくらいの間、唇を重ねていたのかわからない…
やっと私の唇は自由になった。
『…どうして…?』
まだ抱きすくめられたまま、目の前には永倉さんの空色の瞳がある。
『何でか…自分でもわかんねぇんだ……悪ぃ…』
そのまままた唇を奪われる。
『…んっ…ゃっ…っ…』
何でかわからないのに…永倉さんは私に何度も口づけた。
好きだとか愛してるだとか、感情はないのに…
唇がまた離され、見つめ合う。
『…止めてください…っ……私…永倉さんのこと…諦めるって決めたんですから…っ…』
言葉にする度に、喉がつまって涙が流れた。
『…そう、だよな…』
そこには悲しそうな笑顔の永倉さんが居た。
『……さようならっ…』
私は永倉さんの腕をすり抜け、その場を後にした。