薄桜鬼*ひと恋めぐり
□とまどい
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『う〜ん…どっちも捨てがたい…どちらにしよう…』
食堂の券売機の前で悩む。
今日のランチ、A定食にはあじフライが、B定食には野菜炒めが…
『あじフライ食べたいけど…野菜炒めも食べたいしなぁ…』
ぶつぶつと一人呟いていると頭の上から聞き慣れた声が降ってきた。
『何をぶつぶつと悩んでんだ?』
『な、永倉さんっ////』
振り返るとそこには永倉さんが立っていて、券売機横のホワイトボードに書かれた本日のメニューを読んでいた。
『あじフライか野菜炒めか……う〜ん…、俺、あじフライにすっから、まみちゃん野菜炒めにしな?』
『え?あ、あの…』
『どっちにしようか悩んでたんだろ?俺もさ、どっちも食いてぇから半分こしようぜ?』
目を細めて…ニカッて笑う永倉さんに…激しく胸が締め付けられる。
そりゃ、普通に接しないといけないのは解ってるけど…どうしてそんな風に今までと変わらない態度でいられるの?
…それだけ、私にはやっぱり何も感情がないって事なのかなぁ……
『……?まみちゃん?どうした?』
なかなか答える事が出来ずに目を逸らす私に、永倉さんが不思議そうに覗き込む。
『あ…すみません……土方さんに用事頼まれてたのすっかり忘れてて……急ぎだったから、今から済ませてきますねっ…』
私は走って食堂を出た。
土方さんからの用事なんて嘘だ。
永倉さんにはそれが嘘だって解ってるはず。
だけど……何だか苦しくて悲しくて…あの場に居られなかった。